愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ28)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:82,080 hit

★☆ ページ28

.

「では、お二人は近日中に私のマンションに引っ越してくるということで、話を通しておきますね」
「ありがとうAさん！」
「お願いします！」
「けっ」

　かっちゃんがものすごく分かりやすく不機嫌になった。

　それから三時間くらい会話と食事を楽しんで、僕たちは店を出た。話の流れでAさんのマンションまでついて行くことになり同行する。場所を把握しておくためだ。

「ここですわ」
「おおー！」

　最寄りの駅まで五分。僕たちが現在拠点としている職場からも近い。そんな理想的な場所に聳え立つ高層マンションを僕と上鳴君は見上げていた。

「私はここの屋上階に……──あ、」
「Aさんっ、ふらついてるけど大丈夫？」
「ふふ、平気ですよおー」
「ンなわけねーだろ。ちゃんと掴まれ」

　烏龍茶ばかり頼んでいたAさんは、雰囲気に流されてフリーティーなカクテルを頼んだ。飲んでいる最中は平気そうに見えたのに、お店を出た後に酔いが回ってきたらしく足元が覚束なくなっていた。

　ふらついた体をかっちゃんが支える。ぽふっと胸に顔を収めたAさんは動かなくなった。

「…………オイ、こんなところで寝るな」
「ん〜〜〜……」
「──チッ、一杯しか飲んでねーだろ」
「いや、確か爆豪がトイレに行ってる間にもう一杯頼んでたような」
「あ！上鳴君！それはかっちゃんに内緒って……っ」
「ンだとォ！？」
「──あ……！！」

　僕たちだけが知っている。Aさんが「爆豪さんには内緒で」と言いながら同じカクテルを店員に注文していたことを。過保護なかっちゃんに一杯だけと言われていたのに「美味しかったからもう一杯！」とかっちゃんの目を盗んで頼んでいた。バレないように同じメニューにしたのに、上鳴君が口を滑らせてしまった。

「……」
「あはは……ご、ごめんっ」

　笑って誤魔化そうとしたけど、かっちゃんが僕たちを責めるように睨みつけたので素直に謝った。上鳴君は「まぁまぁ」と宥めるように両手を上げる。

「爆豪でも彼女が酔い潰れたら気が気じゃねーんだなっ」
「──……じゃねーわ」
「へ？」
「な、なに？」

　穏やかに寝息を立てるAさんを横抱きにして、かっちゃんは聞き返した僕たちをギロリと睨みつけ、わなわなと肩を震えさせて口を開いた。

「彼女じゃねーわクソがっ！！」

.