愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:82,197 hit

☆☆ ページ3

.

「あー……えっと……」

　飲みやすいと勧めてもらったワインが思いの外美味しくて、何度かおかわりをしていたような。デザートに手をつけたあたりでふわふわと気持ちよくなってきて……それから……、……？

「平気な顔して飲んでっからてっきり強いと思ったら、いきなりぶっ倒れやがって」
「え！？」
「……いや、店出るまでは辛うじて意識はあったか」
「はわわわっ」

　意識はあったらしい……が、私自身この足で店を出た記憶はない。

「ご、ご迷惑をおかけしましたっ。意外に飲みやすくて美味しかったものですから、ソフトドリク感覚で……」
「自分の限界くらい把握しとけや」
「つい最近二十歳になったところですので……」

　お酒が飲める年齢になってまだ数ヶ月。味見程度の少量を数えるほどしか口にしていないので、自分の限界なんて知るわけもなかった。

「てめー、二度と酒は飲むな。飲んでも最初の一杯だけだ」
「……わかりました」
「俺がいる時以外は」
「え？」
「俺と飲む時はいい」
「えと……」

　それはまた食事に誘ってもらえるということなのだろうか、なんて甘い考えを抱く。真面目なトーンで話すものだから調子が狂う。

「記憶がなくならない程度に努めますわ……」
「ん。ちなみに昨日この部屋に来てからのことは覚えてねーんだな？」
「はい」
「自分が何を言ったかも覚えてねぇんだな」
「う……はい」
「自分が何をしたかも覚えてねぇんだな」

　語気が強くなっていく。怒っているというより確認をとっている感じだ。その言い方が意味深でなんだか怖くなってきた。

「わ、私(わたくし)っ、何をしようとしたんですか！？」
「教えてやろうか」
「え！──ひゃぅ……っ、ん」

　首筋に冷たい唇の感触。頬に触れる髪がくすぐったくって身を捩った。

「ばく……あ、ちょ、だめです！」

　両手を前に突き出して押し返すと、爆豪さんはすんなりと身を引いてくれた。

「な、なにを……」
「“なに”って昨日の続きだろ」
「はい！？」
「お前、俺に感謝しろよ」
「へ？」
「昨日の俺の理性に感謝しろ────と、思ったが」

　私の両横に腕をつき、まっすぐに私を見下ろす爆豪さんは不服な表情をしていた。

「俺を見くびっていたことへのペナルティーだ」
「え……、んん！？」

　甘い香りが近くなる。それはペナルティーと称するには似つかわしくないほど、甘く蕩けるような口づけだった。

.