愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ40)

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☆☆　夢が終わるまであと少しページ40

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「あら珍しい。随分と小綺麗な格好ですね」
「えっと……」

　作業用のツナギから着替えた私の服装を見て明は言った。彼女の言う通り、私は髪をシニヨンにまとめて、柔らかい色のワンピースにヒールのついた靴を合わせている。

「そういえば、約束していましたね。昨日」
「……」

　なんの脈絡もなくいきなり「明日の夜、空けとけ。メシ食いに行くぞ」と宣った爆豪さんの一方的な誘いのことだ。

「よほど楽しみなんですね。爆豪勝己との食事が」
「こ、断る方法がなかったんです！！」

　突然の誘いに私がポカンとしている間に、爆豪さんはいなくなっていた。誘いを断ろうにも残念ながら連絡先を知らない。宿泊先のホテルで呼び出しを頼んでみるものの、「今は不在のようですね」と告げられた。

　どうしよう、どうやって断りを入れよう……と考えているうちに、明日着ていく服は？靴は？髪は？と思考が爆豪さんと食事をする前提にシフトしていった。乗り気な自分に負けてしまった。

「食事と言えば……明、今日は何か食べました？」
「さっき栄養ドリンクを飲みましたよ」
「もう、それだけではダメですよ。購買で何か買ってきますから、待っててください」

　今日はおそらく徹夜するであろう友人のために、食堂の中にある購買に向かう。つい最近、私が徹夜していた時は明がそうしてくれたので、今度は自分の番だ。

明が好きそうなパンとおにぎりを手に取ってレジで会計をすませた。

「えっ、百日紅(さするべり)さん？」
「はい？」

　さて、戻ろうかという時に後ろから呼ばれた。

　振り向くと、この大学に通う男子学生がこちらを凝視していた。授業で何度か会っているので顔は知っているが名前を思い出せない。

「あの……なにか？」
「いやぁ……びっくりしちゃってさぁ」

　軽い口調で話す男は口元を緩める。

「俺、前から良いと思ってたんだよね」
「はあ……」
「ねえ、今日暇？飲みにいこうよ。いい店知ってんだ」
「あの、私(わたくし)は今から──……」
「いーからいーから」

　私の弱々しい抵抗は強引な彼にかき消された。

　これから約束がるのに、どうやって断りを入れようか。困惑気味の頭でぐるぐると頭で考える。不機嫌そうに待っている彼の顔を思い浮かべながら。

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