愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ44)

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「……昨日はひどいじゃないですか、勝手に帰るなんて」
「あ？もっと俺といたかったと……」
「そういう意味じゃありませんっ！」
「急に呼び出しやがったんだよ。酔っ払いが暴れてっからどうにかしろって」
「そ……それなら仕方ありませんわね」
「何か用があったんか？」
「今日のお誘いをお断りしようと。でも連絡先なんて知りませんし」
「はーん。なるほどそう言って俺の連絡先を教えて欲しいと。わかったわかった。しゃーねーなァ」
「ち、違いますっ」
「うるせえ。とっととスマホ出せ」
「……研究室の鞄の中ですわ」
「あ゛あ！？持って歩け！さっきみたいなことがあったらどうすんだ！！」
「うぅ」

　何も言い返せなくて体を縮こませる。用事だけ済ませてすぐに戻る予定だったのだ。なのにあんなことになって。あのまま連れられて行ったらどうなっていたのか。

「すみ……ません」
「あーもう、泣くな」
「泣いてませんわ」
「あっそ」

　泣いてはいないが、声が震えているのは隠せていない。頭に優しく手を置いた爆豪さんは、そのまま胸に抱え寄せた。私は抵抗することなくその優しさに甘えて目を閉じる。

「……なんだよ」

　爆豪さんの声。それは私に向けられたものではない。……ということは──と、考えてこの部屋にはもう一人いることを思い出した。羞恥心が一気に跳ね上がり、飛び退く勢いで離れると爆豪さんは舌打ちをした。

　気配をなくしたように静かに私たちを見つめていた教授が口を開く。

「いや、まさか二人が本当に恋人同士だったとは」
「は？」
「──な……っ！？」

　教授口から出た“恋人”という言葉に、私は動揺するしかなかった。

「きょ、きょきょ、教授……いったい何を！？」
「君が男に言い寄られていた時、いつも口にしていたじゃないか」
「え！？」
「『私(わたくし)の恋人はダイナマイトです』──と」
「そ、そそ、それは……っ」
「熱狂的なファンを装って相手をドン引きさせるためだと思っていたのだが、まさか本当に──……」
「わーー、わーーっ！！」

　教授はどんなに難しい数式や化学式もすらすらと読み解くくせに、肝心の空気を読むスキルを修得できていなかった。

「ふー……ん、“恋人”なァ……」
「！？」

　私の決死の奇声もむなしく、残念ながら爆豪さんの耳には届いてしまっていた。

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