★★「あいつは、どこに行った」 ページ45
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「じゃーん！」
「……これは、」
俺は驚き目を見張る。Aの兄が見せたそれは、俺が使っているコスチュームの一部、手榴弾を模した籠手だった。
「Aから君に」
「Aから、俺に？」
「そ。君のコスチュームを担当した俺が監督したから、安心して使ってくれ！」
俺の反応を窺いながらAの兄は得意げに言った。その籠手の一つを持ち上げて俺の目の前に差し出す。
「……っ！」
それを手にした瞬間、何かが違うと感じた。しっくりくるほどにぴったりだった。まるで俺の成長に合わせたかのように。それに今までのものより軽く感じた。
「そうそう。長時間の使用で腕に負担がかかってただろうから、それを少しでも軽減できるように、それでいて頑丈にって。Aの技術はすごいぞ！」
Aが俺のために？熱く語る男の言葉など耳には入って来ず、俺は手の中にある籠手を見つめた。目の周りが熱くなり、視界が滲む。
「Aは！？Aはどこにいるんだ！？」
片目の端から涙が溢れることもお構いなしに、俺は顔を上げて声を張り上げた。
「A？今頃は飛行機の中かなー」
「は？飛行機……？なんで、」
「なんでって留学するからじゃん」
「留学っ！？」
「あれ？もしかして知らなかった？高等部に上がる前には決めてたみたいだけど」
「……っ！？」
二年前のAとのやりとりを思い出し、俺は言葉を失くしていた。どこか噛み合わなかった会話は、全て俺の思い込みによる勘違いだと気づいて。
「……あいつは、どこに行った」
留学で日本を離れたのなら、その国まで会いに行けばいい。俺はポニーテールに尋ねた。
「……Ｉ・アイランド、ですわ」
「な──、！？」
予想外の答えに俺は絶句した。
Ｉ・アイランド──海外に浮かぶ巨大人工移動都市。文字通り科学の力によって浮上し、移動を続ける島。ヴィランに襲撃されて以降は、外部との接触を一切断ち切られていた。今回、Aは特別な許可を得て、そこへ留学に行ったという。
「いつ帰ってくるかもわかりません。研究が認められれば、そのままずっと……」
「……っ、」
俺は唇を噛み締める。たった一つの誤解で、Aとの時間を壊してしまった自分の浅はかさを悔いて。もっとちゃんと話をしていれば──……
(……、A……っ)
会いたいと願っても、それは二度と叶わない場所へあいつは行ってしまった。
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１６☆☆「入国後、外部との接触を一切禁止する……か」→←１５★★「やあ、はじめまして爆豪くん」
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
