１５★★「やあ、はじめまして爆豪くん」 ページ44
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月日は流れ、俺はAとの接触を断ったまま高校生活を過ごし、卒業を迎えた。
……──チリンッ
全て忘れて感情をリセットしたはずなのに、最後の最後に“その音”を聞いて思い出してしまった。
手の中で震えた“鈴”を呆然と眺める。
捨てることができなかった当時の俺は、机の引き出しの奥深くにそれを押し込めた。それが今になって俺の心を掻き乱す。
「……A」
鮮明に思い浮かんだのはあいつの笑顔。拗ねた顔。困った顔。……涙を流す顔。
せっかく忘れていたのに。気持ちを押し殺してなかったことにしようとしたのに。
「爆豪さん、よろしいですか？」
「……！？……んだよ」
寮から出るための荷造りの途中、開けておいた扉をノックする音と同時に俺の名を呼ぶ女の声がした。振り向くとポニーテールが男を連れて立っていた。
「……っ」
俺は反射的に身構えた。その男は紛れもなくAと一緒にいた男だった。寄り添いながら笑い合う光景。今でも思い出してはらわたが煮え繰り返る。
「何の用だ」
男に対して俺はありったけの嫌悪を込めて睨みつけてやった。それでも男は飄々としている。
「やあ、はじめまして爆豪くん。俺はAの──」
「婚約者、だろ」
「へ？」
先んじて答えを出した俺に、男はぽかんと口を開けて固まった。それから「ぷ……っ」と吹き出した。
「いやいや、違うって！俺はAの兄」
「は？……あ、兄！？」
「
「え……、は、はぁ！？」
動揺する俺を見て、やけに軽い調子のAの兄は無遠慮に笑った。
「婚約って、ご破算になったやつだろ？随分前に。相手の男、女にだらしないは酒癖は悪いは、挙げ句の果てには借金こしらえて
「ええ。即断ったみたいですわ」
即断った？だったらあの時、電話で嬉しそうに話していた内容は何だったんだ。ポニーテールとAの兄は、話について行けない俺をよそに会話を続けていた。
「まあ、でもしつこかったから父さんはAの……と、そうそう。俺は今日、君にこれを届けに来たんだ」
「あ？」
Aの兄はニッと笑い、持っていたやけにデカい鞄を俺に向けて開けた。
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
