★★「無事、なんか」 ページ36
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レセプション会場がヴィランに占拠された……だと？
クソ髪が耳女たちと話していた内容が耳に入ってきた。会場の人間が人質に取られているらしい、と。それを聞いた俺の足は、辛うじて形を維持している屋上出口へと向かっていた。
「爆豪、どこに行くんだ」
「──ケッ、」
離れていく俺に半分野郎が問いかけるが、何も言わず悪態だけをついて屋上を後にした。派手に暴れたせいで散乱する瓦礫が邪魔だ。それでも早く、早くと気持ちは急いていく。
なんでこんなに急いでいるのか。誰のために……誰を助けるために駆け出したのか。
「──……チッ」
ヴィランを倒した後、頭の中を占めたのはケーキを頬張りながらだらしない笑顔を浮かべる女だった。
☆
タワーの中、レセプション会場から１階に向かう通路は人で溢れかえっていた。ところどころ崩壊が見て取れるため、我先にとタワーから出ようとする人間が出口に詰め寄っているのだ。その流れに逆らうように俺は会場へと向かった。
いや、会場に行くまでもなかった。Aは廊下の壁沿いに設置されたソファーに座っていた。なぜそんなところで１人でいる？俺が足音を立てて近づくと、伏せていた顔を上げた。
「あら」
「よぅ。……無事、なんか」
「えっと、ええ。大丈夫ですわ」
「……」
不自然に笑う女を見て俺は眉を歪めた。手に持っているのは……靴か？
「爆豪さん、その格好……もしかして、ヴィランに遭遇しました！？」
「あ？」
「だから会場にこれなかったんですね！？お怪我は！？包帯とか必要なら創造しますけれど！」
そんなに心配するほどひどい格好か？改めて自分の格好を見ると、埃まみれで袖や裾もところどころほつれていた。まぁ、何もなかったとは言えないだろうな。
「いらねえよ。こんくらいどうってことないわ。それより、その靴はなんだ？」
「え！？」
「足、腫れてんじゃねーか。まさかヴィランに……」
「あ、え……っと、ち、違うんですっ」
ヴィランの野郎に何かされたのかと問えば、Aは大きく首を振って否定した。それから気落ちしたように下を向き、靴を握る手に力を込めた。
「私が悪いんです。履き慣れないヒールの高い靴を履いてきてしまったから……」
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
