恋したことにも、気づけない【爆豪勝己】 (ページ23)

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　　★★「ど、どうしましょうっ」ページ23

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　会場に戻るとAの姿はなかった。近くのスタッフに所在を尋ねれば、俺がいなくなってすぐにプライベートルームに引っ込んだらしい。

(狙われてるかもしれねぇのに、ウロチョロすんなや……！！)

　あの女に言いたいことが山ほどある。なんで黙ってたんだ。もっと警戒しろ。俺を頼れ。会場を出て人気の少ない廊下を歩きながら、頭の中に文句を並べた。怒りの爆破で髪型が元に戻りそうだ。

(──チッ、鬱陶しいっ)

　ベストジーニストに“今日はできる限り髪を乱すな”と言われている。普段の態度を改められないなら、目立たぬようにしていろと。特にこの会場では。

　ヒーローだって人気商売。それは学生であっても同じ。優秀な成績を残した者は、卒業後に有名企業側からスポンサーにつきたいと話が来るらしい。逆に印象が悪ければ相手にもしてもらえない。俺もそれは避けたいところだ。

(……あ？)

　道中、二人で運ぶには些か大きい箱を抱えたスタッフとすれ違った。展示品の一つだろうか。大事そうに恐る恐る、慎重に運んでいた。

(こんな狭ぇ場所でちんたらしてんなやっ)

　俺は通路の手前で立ち止まって、スタッフが通り過ぎるのを待った。運んでいる箱は大きいが細長く、まるで棺のようだとこの時は思っていた。

☆

　スタッフが辿って来たであろう通路を進んでいると、『この先関係者以外立入禁止』のプレートがあった。近くには警備員。ベストジーニストの名前を出して名乗れば、すんなり進入を許可してくれた。

(んでこんな奥にあんだよ……)

　長い廊下を真っ直ぐ進んでつきあたり。左右に部屋があり、右はスタッフルームで左はプライベートルームだった。

(……ここか)

一応礼儀としてノックはしてやろうと拳を持ち上げた。と同時に扉が勢いよく開いた。

「お嬢様っ！？」
「あ゛！？」

　扉を開き、来客の確認もなしに叫んだのは３０代くらいの女だった。真っ青な顔で俺を見上げている。その手にはカードのようなもの。

　お嬢様。もしかしてAのことか？

「あ……、ど、どうしましょうっ。私が部屋を離れなければ……」
「見せろっ」
「──あっ、」

　嫌な予感がして、動揺する女からカードを取り上げて目を通した。

「──クソ……ッ」

　そこには新聞の切り抜き文字で作られた、なんともありきたりで陳腐なメッセージ。

『娘は預かった。返して欲しくば明日の開催を中止しろ』

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