比翼連理には程遠い２【轟焦凍】 (ページ19)

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幕間◆八百万百◆ ページ19

＊ … * … ＊ … * …＊

「こ、これは……っ！」

麗日の個性で体を軽くしてもらい、どうにか追いつけた八百万が目撃したのは、巨大な氷の出現とともに体を浮き上がらせた男だった。
イメージとしてはスノボーで高い壁に跳び上がって技を披露する感じだが、もちろん彼はそんなことをしようとしているわけではない。

「Aさん！轟さん、Aさんが！」
「大丈夫だ」

当然男に抱きかかえられたAも同じように宙に浮いている。
氷の発生地点にいる轟にそれを伝えたが、それも想定済みであるようだった。
そして直後、明らかに自然現象ではない風が男からAの体を切り離し、まるで風ですくいとるようにふわふわとAを連れて行ってしまった。

その風を操る主を見て八百万はどこかで見たことがあるような……と記憶を辿った。

「あの方は確か仮免試験にいらした……」

「夜嵐だ。Aの救出を頼んだ」

「まぁ、そうですか」

無事にAを誘拐犯から引き離したのに轟は少し不満げであった。
本当は自分で助けたかったのだが、それよりもAの身の安全を優先したのだろう。
彼に依頼したのは最善の策であると轟の英断を評価した。

「それで、どうしましょう？」

Aの安全が確保できたことで次にすべきことは誘拐犯の男である。
八百万は氷で下半身を覆われた男を眺めながら轟に尋ねた。

「……そうだな。氷で責めるか、炎で責めるか。どちらの方が黒幕の名前を吐かせやすいか……」

「いえ、そんな拷問まがいなことを提案しているわけではなくて。警察かヒーローに通報しましょうかということですわ」

容赦ない言動から相当怒りを感じていることは伝わってくるが、ここは抑えてもらわないと困る。
それでいても彼はまだ仮免を取得していないのに。

言葉の意味を訂正すれば、轟は思い出したように「ああ」と呟いた。

「それなら親父のサイドキックに連絡を入れておいたからそのうち来るだろう。警察にも連絡するように頼んでおいた」

「そう、ですか」

連絡する先が父親でないところがまた轟らしいと八百万は苦笑いを浮かべた。

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