失われた雪の欠片９ ページ16
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Aは焦点の合っていないような目をしていた。
顔の前で手を動かして呼びかけても大した反応はない。
とりあえず、Aの手から空になったマグカップを取り上げて流し台に置いた。
「な──、オイっ」
「ぁ、」
──と、またふらついたと思ったらAの体が後方へと傾いていった。
咄嗟に腰に手を回して引き寄せる。
本人も踏ん張ってくれたようなので、床に体を打ち付けるのはなんとか阻止できた。
まだ体調が万全ではないらしい。
寒い中で歩き回ったと言っていたから、体の疲れがピークに達したのだろう。
(なにやっとんだ、バカ……)
抵抗のないAを抱き寄せると、胸のあたりの服をギュッと掴む感触。
見下ろすと疲れた顔のAが見上げていた。
「ごめんなさい、もう大丈夫、だから……」
「ンなわけねーだろ」
爆豪はAを抱き上げて共用スペースへと足を進めた。
ついいつもの調子で抱き上げてしまったが嫌がる様子はない。
服を掴んだままぴったりとくっつき、力なく寄りかかっている。
抵抗する気力がないのかもしれない。
(……)
求めていた温もりを取り戻せたような感覚に胸が満たされていく。
ああ、でもだめだ……。
爆豪はAソファーに座らせるように降ろした。
離れようと思ったが、Aの手はシャツを掴んだままだった。
振り払うこともできるが、弱々しく縋るように掴む手を無理矢理引き離すことはできなかった。
「A」
爆豪はそのままの状態でAの名を呼ぶ。
「なに？」
「……俺に気ぃ遣うことはねぇからな」
「え？」
Aが弾かれたように顔を上げ、視線が交わる。
「確かに俺たちはつき合ってた。だからと言って無理することはねぇ。てめーの好きなように生きろ」
決意を固めて言葉を紡ぐ。
「記憶が戻らなかったとしても気にするな。…………他に好きな奴ができたら、俺のことなんか忘れ──」
「どうして……っ、どうしてそんなことを言うの！？」
爆豪の言葉を遮るようにAが大きな声を出した。
「勝己君なら“意地でも離さねえ”って、“もう一回惚れさせてやる”って。それくらい……強気に言ってのけてよっ！！」
それはどんどんと涙まじりに、弱々しく声を震わせていく。
「私を……諦めないでよ……っ」
立ち上がったAは、爆豪の胸に縋るように飛び込んだ。
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パチ麻呂(プロフ) - 続編うれしいです、作者様もどうかお身体に気をつけてください！ゆっくりでもいいのでずっと待ってます(;_;) (2020年5月8日 0時) (
レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - 完結ですか？？この作品ものすごく好きだったので完結するのが悲しいです((泣)) (2020年3月5日 20時) (レス) id: 3aa825630d (このIDを非表示/違反報告)
鳳＊(プロフ) - えっ、、、イラスト美味すぎん、、、？作品内容もバリ良きだけど、イラスト書いている私からしてもこりゃ上手いわ……！ (2020年1月16日 17時) (レス) id: 63e109079e (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - お話は面白いし絵も素敵です。 (2019年10月24日 2時) (レス) id: 4b6f8d26fa (このIDを非表示/違反報告)
ツートップは神でしょ - すいません！轟さんバージョンの作品を見つけました！知らずに聞いてすいません・・・でもこのシリーズとっても大好きなのでこれからも頑張って下さい！！ (2019年5月8日 20時) (レス) id: 1be51e16a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2018年11月14日 22時
