ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ10)

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０３◆「ここに来るなんて珍しい」ページ10

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「Aさん、お迎え来てますよー」
「はい？」

父親の事務所でアルバイト中。
キーボードを叩いて書類作成をしていると、事務員から声がかかった。

(お迎え……？)

「応接室に通しておいたから」

誰を──とは言わず、事務員は奥のキッチンにお茶を用意しに行った。
確認するため応接室に向かえば、ソファーに腰掛けている爆豪がいた。

「あれ？勝己君だ。ここに来るなんて珍しい」
「もう終わりだろ。飯いくぞ、飯」
「今日、私はおうちに帰るつもりなんだけど。あと焦凍に送ってもらう予定」
「──チッ」

焦凍の名前を出せば不機嫌さを全面に出して舌打ちをした。

「その半分野郎から連絡が来た。時間に間に合いそうにねーからてめーを頼むって」
「あらら」

焦凍は休憩の後、もう一度パトロールに出た。
爆豪の言い方からして出先で何かあったらしい。

Aの就業時間に帰ってこれなさそうなので爆豪に頼んだということだ。

「おら、とっとと片付けろ。俺は腹減ってんだ。飯食いにいくぞ」
「んー……冷蔵庫に賞味期限が切れそうな食材が結構あるんだけど」
「アイツにでも食わせとけ」
「酷いなぁ」

Aが冷蔵庫の中を片付けたいと暗に訴えれば、焦凍に処分させろと言う。
雄英を卒業して数年経っても、爆豪の態度は相変わらずだ。

「うちでお鍋じゃダメ？」
「半分野郎がマンションに近づけるなっつってんだよ」
「なんで？」
「近くで犯罪者が暴れてる。エンデヴァーも手を焼いてるらしいから援護してるんだと」
「あぁ……そういうこと」

連絡がきた時に呟いた父親の「近いな」という言葉は、そういう意味だったのだと納得した。
焦凍に送ってもらえのというのも同じ理由だろう。

「勝己君はいいの？応援に行かなくて」
「手は足りてるらからいーんだとさ」
「ふぅん……分かった。準備してくるから待ってて」

デスクを片付けにいこうと応接室を出ると、お茶を乗せた盆を持って立っている事務員がいた。
かなり緊張しているようだ。

たしか彼女はダイナマイトのファンである。
彼の横暴な態度に幻滅しなければ良いのだが……。

「勝己君、事務員さんに失礼な態度とらないでね」
「わーってるわ！」

一度出た扉から顔を出して釘を刺せば、「はよ行け」と手であしらわれた。
せっかく名前が売れてきたんだから、ファンは大事にして欲しい。

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