ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ20)

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　　　「なにムキになってんだよ」ページ20

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切島は注目を集めないかと冷や冷やしていた。

(休憩中とはいえヒーローがゲームコーナー……。バレたら上から怒られそう)

Aはむすぅ……っと、反省の色を見せない爆豪を睨みつけていた。

「なにムキになってんだよ」
「……」
「なんか甘いもんでも買ってやるから、機嫌なおせ」
「むぅ」

さすがに居心地が悪くなって機嫌をとりにいったが、Aの態度は変わらずだった。

「じゃあ……勝己君がとってくれない？」
「あ？なんで俺が」
「はぁ……、勝己君でも無理かぁ……そうだよね、難しいもんね」
「ンだとゴラァ！！貸してみろ、とったるわ！」

爆豪は分かりやすい挑発に乗って、財布から小銭を取り出し投入した。
Aが小さく「やったぁ」とガッツポーズをしたのを、切島は見逃さなかった。

「オイ、気が散るからクソ髪とそこらへんでなんかしてろ」
「え～～……」

しっしっと追い払うような仕草に、Aは不満げな声を漏らす。

「いいじゃんAちゃん！こっちは爆豪に任せて太鼓でも叩こうぜ！な？」
「んー……わかった」

いくら才能マンの爆豪でも一発では無理だろう。
失敗したところを見られたくないのだと見抜いた切島は、Aを連れてその場を離れた。

＊

Aと叩く太鼓のリズムゲームは思いの外盛り上がった。
子供が夢中になる気持ちがわかる。

「オイ、とれたぞ」
「わ～い────って、これダイナマイトじゃん！私が欲しかったのはショートなのに！！」

渡されたぬいぐるみが求めていたものと違い、Aは文句を言った。
爆豪は悪びれもせずツンと顔を背ける。
もしかして、最初からそのつもりでAを引き離したのではなかろうか。

「あ……えっといいじゃん、Aちゃん。爆豪のぬいぐるみでも」
「……もう家にある」
「え」
「毎日抱っこして寝てる」
「…………そう」

余計なことを言ってしまったばかりに、傷心中の自分にダメージを与えてしまった。

「うー……ん、仕方がないか。これは勝己君の家用にしよう」
「あ？」

ぬいぐるみを抱きしめてAは言う。

「勝己君の家にお泊まりする時に抱っこして寝るの」
「は？本物がいるだろーが」
「本物は固いし抱っこされるのは私の方じゃん」
「“抱かれる”の間違いじゃねーのか？」
「そ、そういうこと言うのやめて……っ！」

……誰か、このリア充の会話を止めるか俺を殴って気絶させてくれ。

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