ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ21)

今日:8 hit、昨日:15 hit、合計:244,535 hit

０６◆「怪我？」ページ21

.

季節は移り変わり、夏になった。
蒸し暑い日々が続く中、Aにある１本の連絡が入った。

「え……怪我？」

敵との交戦中、爆豪が怪我をしたという、上鳴からの簡単な報告だった。
暑さとは違う汗が流れ出る。

「上鳴君、それどういうこと！？勝己君は！？」
『ばくご──は、……、……ら！ごめ……、また連絡す────』

現場はまだ混乱が続いているらしく、雑音がうるさくて肝心の部分が聞こえない。
電波状況も悪く、通話は切断されて耳には通話終了を知らせる機会音が、繰り返し響いていた。

慌ててテレビをつけてチャンネルをあわせる。
人が多く集まる劇場ホールが襲撃を受けていた。

《こちら、現場からの中継となります。現在は──》

ヘリコプターからの中継が映し出されている。
事件は解決していたが、テロップには『脳無出現！？ヒーロー数名が重軽傷』と出ていた。

「……勝己君っ」

思わずスマホを手にとる。
履歴にある爆豪の欄をタップしようとして……、──思いとどまった。

(ダメだ。今は……)

まだ出動中。
勤務中の爆豪への連絡はなるべく控えると決めていた。

もし尾行中だったら任務は失敗。
交戦中ならなおさら、着信に気をとられて敵に隙を与えてしまう。
命に関わることも。

爆豪自身は「ンなの気にしねーで好きな時にかけてこい」と言うが、けじめはしっかりつけないと。

(でも…………、──っ！？)

スマホをぎゅっと握りしめて胸に抱いていると、突然の着信。
画面には『爆豪勝己』の文字が表示されていた。

＊＊＊＊

Aは病院へと走った。
無事であることは本人の口から聞いた。

でも、それは強がりかもしれない。
自分の目で確かめるまでは安心できなかった。

受付で名乗れば、すんなりと爆豪が待つ個室へと案内された。
そこにはベッドの上であぐらをかいて、不機嫌そうにテレビを見る爆豪の姿。

「勝己君っ！」

顔のあちこちに絆創膏が貼られている。
右腕はギプスをつけて、首から下がる白い布に収められていた。

「それ……」
「骨折した」
「命に別状は……」
「ねぇ。見りゃ分かるだろ」
「……よかったぁ」

安堵のため息をつく。
ベッドの前で膝を折れば頭に手が乗った。

「A」
「？」
「ん」

頭から手が離れて、名前を呼ばれる。
顔を上げると左手を広げた爆豪がこちらを見つめていた。

Aは右腕に気を遣いながら首に腕を絡めて抱きついた。

.