ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ14)

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　　　「……バカ」ページ14

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翌朝、むすっとして口をきかないAに爆豪は手を焼いていた。

目が覚めたAは体を起こしてもベッドから動こうとせず、ただ爆豪を睨みつけているだけ。
理由は言わずもがな昨晩のことだろう。

「そろそろ起きねぇと授業に遅刻すっぞ」
「……」

時間が迫っていることを示唆しても、眉１つ動かさない。
心做しか部屋には冷気が漂っているように感じる。

(さすがにやりすぎたか……)

ソファーで押し倒して、キスをして、体を貪って。
一度満たされた後は浴室で……、それからベッドで何度もAを求めた。

意識を飛ばさないよう取り計らいながら、Aが「分かった、泊まる……」と言うまで愛し尽くしてやった。

(お前だって善がってたじゃねーか)

しかしそれを口にすると部屋の温度が氷点下になりかねないので、心の中にだけ留めておく。

「A」
「……」

Aの機嫌は変わらず。
爆豪の呼びかけに、ぷいっとそっぽを向いた。

このまま放置しておくと余計に面倒なことになる。
爆豪はそそくさと部屋から出ていき、手早くフレンチトーストを作って戻った。

「おら、食え」
「……」

ハチミツをたっぷり塗りこんだそれをフォークで刺して、不機嫌MAXなAの口元にもっていく。
お腹は空いているらしく、一口サイズに切ったフレンチトーストを雛のように頬張った。

お気に召したのか、口を開けて次の一切れを催促する。

(……ったく)

機嫌を損ねたAを元に戻すのには骨が折れる。
まぁ、悪いのは自分なのだが。

＊

食べ終えたAは何も言わず浴室へと向かっていった。
ようやく準備する気になったらしい。
爆豪もAを大学まで送るために支度を始める。

車のキーを持ってソファーに座って待っていると、準備ができたAが近づいてきた。
何も言わず、爆豪の顔を両手で包み込んで唇を重ねた。

(機嫌なおったんか……？)

抵抗せずにいると、舌で口を開くよう促さた。
それに従い口を開けば中に固い何かが入ってきた。

酸っぱいような苦いような、不思議な味と爽快感が口内に広がる。

(……のど飴？)

Aは唇を離し、新しい飴を口に放り込んだ。
なるほど、この味が気に入らなかったのか……と、押しつけられた飴を噛み砕いた。

「……バカ」
「あ？」

やっと言葉を発したAの声は少し掠れていた。
ずっと黙っていた理由を爆豪はやっと察することができた。

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