ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ8)

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　　　「その場合、焦凍が出ていくけど」ページ8

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事務所内が平穏になった頃、Aは父親と喫茶店でお茶をしていた。

ホットコーヒーを飲む父親の向かいでチーズケーキを食べる。
この店の常連客にとっては“よく見る光景”になっていた。

「A」
「ん？なぁに？」

チーズケーキを口に含みながらAは父を見る。

「爆豪君はどうしてる？」
「……」

コーヒーカップの中身を眺めながら、父親はAに問いかけた。

「雄英を卒業し、ヒーローになって３年経った」
「……うん」
「研修も一通り終えて現場にも出て活躍している」
「……そうだね」

Aは父がこの後に言うセリフが頭の中に浮かんだ。

「そろそろウチの事務所に来てもらっても良いんじゃないか？」

(ああ……出たよーー……)

Aはあからさまな態度で目をそらした。

父親は爆豪のことをいたく気に入っている。
どうにか自分の事務所に引き入れたいと考えているらしい。
この会話も今月で４回目だ。

「お父さん。勝己君にだって目標があるんだから邪魔しちゃダメだよ」
「う、うむ……しかし」
「なんのために“ヒーロー活動支援協会”に所属してると思ってるの？」
「……」

仕返しとばかりにこの話題を出すと、父親は渋い顔をした。

爆豪は雄英高校を卒業してからは、ヒーロー事務所ではなく「ヒーロー活動支援協会」に所属している。

プロヒーローとしての技量を底上げするための団体。
いわゆるヒーローの大学のようなものだ。

各事務所に所属しているヒーローと活動内容に変わりはないが、サイドキックではなく己が主となって活動する。

与えられる仕事のランクは下がるが、事務所ではなく個人の功績に残すことができるのが特徴的だ。
ここで5年ほど経験を積めば個人の事務所を構えることができる。

数年前まで事務所の設立は自由だったが、現在は数年間サイドキックとして実績を積まないと許可が下りなくなっていた。

爆豪は性格・性質からしてサイドキック向きではない。
自分をしっかり理解した上で選択したのだろう。

「いや、事務所を構える前にどこかに所属しておいた方が将来的には……」

父親はまだ諦めきれないらしい。

「その場合、焦凍が出ていくけど良いの？」
「……」

爆豪がエンデヴァーの事務所に所属することになった場合、「じゃあ俺が出ていく」と焦凍が言っていたことを持ち出せば、父親は簡単に黙った。

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