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そして、夜中。
寮生たちとユウやカリムが寝室に戻った頃、Aとジャミルは談話室にいた。
「｢……｣」
かなり気まずい状況、Aは俯くばかりだ。
「話だが……」
「は、はい……！」
びくりと肩を震わせるAに、ジャミルは気にせず口を開く。
「……君はなぜ目を合わせてくれない？」
「……へ？」
何を言われるのかわからなくて怖い、という感情を持っていたAだが、その感情はジャミルの質問によって砕かれた。
思ってもみない質問で、Aの口からは間抜けな声が出た。
「君は会ったときから最初こそは合わせてくれたが、今じゃ俺に目を合わせてくれない。それに話していた時だって、目を逸らした。
俺は、どうしてだと聞いている」
「えーっと……」
「そんな困った顔をするな。俺が悪い事したみたいじゃないか」
「そ、そんなつもりはなくて……えっと、ごめんなさい」
「謝らなくていい。だが、アカデミーで習っていないか？“人と話す時は、目を見て話す”と」
「……おっしゃる通りです」
(さて、どうする……。どう誤魔化そう……)
ジャミルのユニーク魔法は
ジャミルと目を合わせてしまうと、相手は洗脳状態に陥る。
だから、Aはジャミルと目を合わせようとしなかったのだ。
考え込んでいるAに、ジャミルは怪しいと目を細める。
「……なにか言えない事情でもあるのか？」
「べ、別に何もないです……！で、でも少し……は、恥ずかしいというか……！」
先走った言葉は“恥ずかしい”という言葉だった。
「恥ずかしい？」
「そ、そうなんです、よ……。あはは……」
とんでもなく気まずい空気が流れる中、Aは冷や汗をダラダラとかいていた。
「そういう理由なら無理には問わないが。
……わかった。今日はもう寝るといい。夜遅くにすまないな」
「い、いえ！ジャミルさんも今日はお疲れさまです。おやすみなさい」
Aはそう言って、ぺこりと礼をする。
ジャミルはふっと笑って『ああ、おやすみ』とAの頭をぽんと手を置いた。
「……え、」
Aの腑抜けた声が出たのは、ジャミルが去った後だった。
(じゃ、ジャミルに頭ぽんってされたっ……！！
というか、危ないっ……！よく耐えた！私……！)
(何やってるんだ。俺は……)
頭の中ハイテンションなAと裏腹に、ジャミルはため息をついて、早足になりながら自室へと戻った。
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作者名：金平糖
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作成日時：2022年4月10日 15時
