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“無能な寮長”と聞いて、Aは言い過ぎだと思った。
正面で言えないヤツらが裏で何言ってんだ、と腹を立てていた。
「「スカラビアに無能な寮長はいらない!!!」」
寮生たちが声を揃えて、言う。
その声量はだいぶ大きかった。
「──お前たち、こんな時間に集まって何をしている?」
「「!!!」」
やけに低い声に、ユウたちは震えた。
みんなが振り返る先には、カリムがいた。
「げげっ、見つかっちまった!」
「か、カリム……!」
「どうやらお前たちには昼間の訓練では物足りなかったようだな。体力が有り余っているらしい。
ジャミル!今すぐ寮生たちを庭に出せ!」
「庭へ……?」
「限界まで魔法の特訓をする」
「そんなむちゃくちゃな……!」
「オレ様、すでに疲れが限界なんだゾ〜!」
グリムや寮生たちが弱音を吐く。
Aは見ていられなかった。
ユウやグリムの顔を見ると、やつれているようにも見えた。
Aはカリムを止めたい気持ちで溢れた。
しかし、原作を止める訳にも行かない。
(このままじゃユウくんとグリムが可哀想だ……。でも原作を止めたくない……。
……ッ、私はユウくんを護りたいって決めたはずだ。こんなんじゃ、護るどころか何も出来ない役立たずじゃないか……!)
Aはぎゅっと拳を握りしめて、カリムに近づいた。
そして引き止めるように、カリムの腕を取った。
「……なんだ。なんか文句があるのか」
「Aさん……?」
「Aのヤツ、カリムに文句言う気じゃ……!」
「……どうか、今回のところは休ませてあげてください!このままでは成績が上がるどころか、疲れで──」
「うるさい!部外者のお前が口出しするな!」
「ッ……でも!」
「離せ!」
手を振りほどかれ、Aの意見は聞いて貰えなかった。
「ジャミル!早くみんなを庭に出せ!」
「……わかったよ。お前たち、外へ出ろ」
立ち尽くす私にジャミルはこちらに近づいてきた。
「あとで話がある。これが終わったら、二人で少し話をしよう」
そう言われ、ジャミルは庭へ出ていってしまった。
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作者名:金平糖 | 作者ホームページ:(ヾノ・ω・`)ナイナイ
作成日時:2022年4月10日 15時