居場所を守るモデル王子-38- ページ10
正直、また俺から逃げたんだと思っていた。だって今までだってそうだ、俺が本当に望んだモノだけは絶対に手に入らなかったんだから。
今までと同じだって思っていた。
｢セッちゃんどこ行くの？｣
行かなきゃって思った。他人の為に熱くなる俺なんてらしくないと思いながら
｢うさにゃんのとこ！｣
｢いってらっしゃ〜い♪｣
くまくんに見送られながら、舞台袖の方へと向かう。あんな綺麗に笑っていたうさにゃんを見て、俺の思っていたことなんてもう言えるワケないじゃん
また
…………もう言えないじゃん
｢ちょ〜うざぁい｣
｢泉、さん？｣
丁度、楽屋に行く途中だったうさにゃんに名前を呼ばれた。
｢楽屋に来てくださいよ｣
俺は言われるがまま着いて行き、楽屋のソファに腰を掛ける。
｢僕、着替えちゃってもいいですか？｣
｢ん？ああ、勝手にすれば？｣
俺がそう言うと、うさにゃんは後ろのラックの方を向きながら着替え始めた。きっと背中合わせになっているのだろう……
｢ねぇうさにゃん
俺さ、待ってたんだよぉ｣
吐き出したその声は俺が思っていた以上に掠れていた。
｢知ってます｣
うさにゃんはそこで言葉を切った。ゆっくり言葉を選びながら、話し始める。
｢なるちゃんと凛月の態度からなんとなく｣
なるくんもくまくんも、ねぇ……
そこまで気が付いていたなら、何で、何でなんだろう
｢残酷だねぇ｣
酷いな、うさにゃんは
｢僕は、逃げた
そんな僕が戻るなんて、僕が僕自身を許せない
それだけです｣
ほら、やっぱり
残酷だねぇ、うさにゃんは
まぁでも、安心した。そんなこと、嘘でも言ってやらないけど。
｢はぁ？それ、俺以外の前で言ったら怒るからねぇ！｣
これでも俺はKnightsの中で最年長なんだから。みんな、守ってやんないと
｢言わないですよ｣
勘が良すぎるのも、考えものだねぇ
｢アンタはあのとき、充分に頑張ってたよ｣
頑張ってた。だから、心配してた。だって、うさにゃんは出来が良すぎる弟だから。
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作者名：雪桜 | 作成日時：2016年11月14日 15時
