17話「くんかくんか」 ページ18
弾かれたように山へ走り出す。遠くで先生の声がしたが、すぐに雨にかき消されて聞こえなくなった。この雨じゃ、俺の鼻も効かない。どこにいるんだ、どこに！！
「くそｯｯｯ！！！！」
やっぱり離れるべきじゃなかった。女子2人を残して先に山を降りるなんて、長男の、男のやることじゃない。あの時俺が残っていたら、離れなければ。不安ばかりが、最悪な未来が頭をよぎる。
入学式の日、実は学校に着く前に困っているご老人を助けている彼女を見かけたのだ。彼女からは、今まで嗅いだことの無い様な、優しい暖かい匂いがした。今思えば、その瞬間から俺は彼女に惹かれていたのだろう。クラスで名前を見かけた時、運命だと思った。
委員会を決めたあの日。先生に押し付けれる形で前へ出た青柳さん。チャンスだと思った。
もっと知りたい。仲良くなりたい。話したい。笑顔が見たい。隣にいたい。全部の表情を見たい。気づけばそんなことばかり考えていた。
こんなにも自分に独占欲があったのかと最初は驚いたけど、悪い気はしなかった。むしろ嬉しかった。
兄弟が多いせいかその世話や店番ばかりで、友人が恋だの彼女だの話しているのを聞いてもピンと来なかったのだ。自分は普通じゃないのかもしれない。一時期悩んだ時期もあったけど、今は胸を張って言える。きっと、これが恋をするということ。人を好きになるということ。
何でもしてあげたい。こっちを、自分を見て欲しい。俺はきっと、青柳さんの為なら、なんだってできる。
「か、竈門くん…！！」
声がした。慌ててそっちへ向かうと、木の影で座り込む木下さん。よかった、彼女がいるということは、近くに青柳さんもいるはずだ。
「良かった、無事だな。偉いぞ！ところで、青柳さんは？彼女はどこに…」
「そ、それが…Aちゃん、私が動けないこと察知して、1人で先に行っちゃって…会ってないってことは…もしかして、迷ったんじゃ…」
何も言わずに立ち上がって、再び走る。青柳さんとはすれ違っていない。視界は最悪だが、至近距離なら匂いを把握出来るはず。思いっきり名前を叫んでみたが、雨にかき消されてしまう。届かない。
こうなれば一か八か。目を閉じて集中する。嗅ぎわけろ。優しい、大好きなあの匂いを。
クン、とひと嗅ぎ。雨の匂い、草の匂い、動物の匂い。そして、探していた匂いと、仄かな血の匂い。
それを辿り、道を逸れ斜面を下る。
目に飛び込んできたのは、横たわる彼女の姿だった。
18話「グローブボックスわかんなかったら検索かけてね！」→←16話「焦り」
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雲雀浬 - あっ！言い忘れてた、剣道部でーす！続き楽しみにしてるよ！頑張ってね！ (2020年5月15日 2時) (
レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
雲雀浬 - はじめまして！雲雀浬です！すっごく面白いです！伊之介可愛い！！！！むふふ♪あっ！あと、冨岡さんは、ウ冠ではなく、ワ冠ですよ！続き、頑張ってください！！ (2020年5月15日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - すれぃさん» 山本氏書きやすくて…ついつい多めに出しちゃってますね……笑 優しくていい子なのでそれもありですね！おっと誰か来たようです(茶番やめな) (2020年5月14日 17時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
すれぃ - もうなんだか山本くん落ちでも良い気がしてきました(あかん) (2020年5月13日 22時) (レス) id: a4dc3297d8 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - メイアPさん» 嬉しいコメントありがとうございます！そうですね…自粛が続き、ストレス溜まりやすかったりしますもんね…そんな中で少しでも楽しんで頂けたなら本望です…！更新頑張りますね！！！！ (2020年5月9日 11時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひなた | 作成日時：2020年3月28日 12時
