16話「焦り」 ページ17
伊之助の言った通り、天気は一変し雨が降ってきた。しかもかなりの勢いだ。持ってきていたカッパを着る。朝はあんなに晴れてたのにチクショウ。
「すみちゃん平気?もう少しだから頑張ろ」
「うん…ごめん、ごめんね」
「全然!体すっかり冷えちゃったし、降りたら暖かい飲み物でも冨岡先生に奢らせよっか」
「ふふっ、そうだね」
視界が悪い。足元もぬかるんでいて、下手すれば怪我に繋がりかねない。雨に濡れたことで体温も奪われている。すみちゃんの疲労もピークだろう。非常にまずいな。
「すみちゃん、聞いて。私、今から1人で先に降りて誰かを呼んでくる。これを渡しとくね。気休めにしかならないかもだけど、持ってて。絶対戻ってくるから」
とりあえず直接雨に打たれないよう、大きな木の影に移動して、まだ十分に温かさの残るカイロを渡す。リュックの奥の方に未使用が入っていたのだ。グッジョブ過去の私。身軽になるために荷物も置いていこう。
不安そうなすみちゃん。けど状況は分かっているようで行かないで、とは言わない。その口にポイッと飴玉を放り込む。
「私のオキニのいちごミルク。舐めて待ってて」
そう伝え、微笑むと私は雨の中へと飛び出した。恐らく、先に降りた竈門くん達が先生に伝えてくれているはず。だからこっちに向かってきてくれている…と信じたい!その先生たちと合流出来れば!!!
一刻も早く知らせて、合流しなければ。焦りが私の頭を支配した。その瞬間。ズルッと濡れた葉っぱで足を滑らせ、姿勢を崩した私は大きく放り出された。やばい。受身をとろうとした瞬間、大きな木が目の前まで迫り反射的に強く目を瞑った。
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別れる前、先に降りて欲しいと青柳さんに頼まれそのまま俺は急いで山を降りた。他でもない彼女の頼みだ。それに、あの場面だと懸命な判断だろう。けれど、本当にあれで良かったのだろうか。下に降りると、人数を確認している冨岡先生が目に入った。すぐに事情を話して伝えると、冨岡先生にしては珍しく険しい表情に変わった。
「竈門、お前はここで降りてきた生徒たちの対応と人数確認を頼む」
「先生はどうするんですか?もし青柳さんの元へ行くなら俺も…」
「だめだ。この天候、遠足で登るような山と言っても、山は山だ。最悪のことも考えられる」
「最…悪…?最悪って、…それって」
「あくまで可能性の話だ。先生たちで対応する。わかったらお前は…って、おい!!!竈門!!止まれ!!!」
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雲雀浬 - あっ!言い忘れてた、剣道部でーす!続き楽しみにしてるよ!頑張ってね! (2020年5月15日 2時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
雲雀浬 - はじめまして!雲雀浬です!すっごく面白いです!伊之介可愛い!!!!むふふ♪あっ!あと、冨岡さんは、ウ冠ではなく、ワ冠ですよ!続き、頑張ってください!! (2020年5月15日 0時) (レス) id: 1a3e36626c (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - すれぃさん» 山本氏書きやすくて…ついつい多めに出しちゃってますね……笑 優しくていい子なのでそれもありですね!おっと誰か来たようです(茶番やめな) (2020年5月14日 17時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
すれぃ - もうなんだか山本くん落ちでも良い気がしてきました(あかん) (2020年5月13日 22時) (レス) id: a4dc3297d8 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - メイアPさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そうですね…自粛が続き、ストレス溜まりやすかったりしますもんね…そんな中で少しでも楽しんで頂けたなら本望です…!更新頑張りますね!!!! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひなた | 作成日時:2020年3月28日 12時