9話「いざゆかん、最終選別」 ページ9
緊張しているのか、表情が固いやまとちゃん。やっぱ怖いよなぁ。いくら鍛えたからって必ず生きて帰ってこられる確証なんてない。こうやって旅立っていった剣士のどれくらいが命を落としていったのだろう。想像もできないや。けど、その人たちがいたからこうやって、受け継がれているんだ。
改めて、ぎゅっと日輪刀を握りしめる。怖くないわけじゃない。けど、何故か心は晴れやかだった。
外に出ると、ご近所さんが総出で待ち構えていた。わっと囲まれ、頭や顔を撫でられる。ざ、雑いなおい。
いつもは無愛想なおじさんも端で鼻水を垂らしながら泣いていた。
思わずやまとちゃんと顔を見合わせて、そしてふふっと笑い合う。
「やまと、A」
名前を呼ばれて振り返る。少し寂しそうな、耐えているようなそんな表情を浮かべたおばあちゃんの手には耳飾りと髪飾り。それぞれ私とやまとへつけてくれた後、優しく抱きしめてくれた。暖かい。優しく香る微かな藤の花の香り。ちょっと泣きそうになる。
どちらにも共通して藤の花がモチーフになっている。耳に穴開けてて良かった。やまとも嬉しそう。似合ってるし、可愛いさ倍増ってもんだ。
「頑張っておいで!!鬼になんか負けんじゃないよ!!!!」
「帰ってきたら、美味いもん食わせてやるからな!」
「おねぇちゃん!!早く帰ってきてねッ!グスッ」
「いってらっしゃい」
「「行ってきます!!」」
笑顔で手を振って、やまとと共に歩き出す。やまと、最後まで泣かなかったけど、大丈夫かなと横目に様子を見ると、微かに震える手と、固く噛み締めらた唇が目に入った。我慢しているのだろう。小さいのに大した子だ。
黙って手を取り、ギュッと繋ぐ。大丈夫、と意味を込めて、強く握った。
「頑張ろうね」
「……ん、」
暫く歩くと藤の花がちらほら見えてきた。その量は次第に増え、いよいよ近づいてきているのだなと感じる。しっかし凄い量。これが鬼にとっては毒になるのねぇ。ちょいちょいとつつく。帰りにいくつか積んでいきたいな。お守りにもなるだろうし、誰に許可取ればいいんだろ。やっぱお館様…?
長い階段を登りきるともう既にたくさんの人がいた。原作読んでる時も思ったけど、やっぱ結構受けるんだな、最終選別。ファンとしてはちょっと興奮。興味津々で辺りを見回す。って、あれ…?
「…ぁっ、ああぁぁぁッッッ!!!!」
おもわず指をさして大声をあげた後、ハッと慌てて口を手で覆う。…やっちまった。
10話「いざ推しを目の前にすると叫んでしまう派のオタク」→←8話「最低限でいいんで。」
124人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鎖夏(プロフ) - 楽しく拝見させて頂いてます。私、錆兎が大大大好きなので、この作品まじ最高すぎます!!夢主ちゃんの性格もよき笑応援してます!! (2020年6月22日 18時) (レス) id: a8669a7d2d (このIDを非表示/違反報告)
花札 - そういえば、ひなたさんの推しは誰ですか?それと、有一朗君が死んでしまった所とっても泣きました。カナエさんはどうなるんでしょうかね。頑張ってください!! (2020年6月5日 15時) (レス) id: bb31b5d897 (このIDを非表示/違反報告)
いくら - ひなたさん» いえいえ!!こんな素敵な小説なら、いつまでも待てますよ!! (2020年5月19日 12時) (レス) id: 16c4d9d785 (このIDを非表示/違反報告)
花札 - こんにちは、とても面白かったです。(はやく続き読みたい・・・。)更新、頑張ってください!応援してます!! (2020年5月9日 21時) (レス) id: bb31b5d897 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - いくらさん» くそみたいに更新遅くて申し訳ないです…!頑張りますね!!!! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひなた | 作成日時:2020年3月17日 12時