44話「生きていて欲しい」 ページ44
同じタイミングでの最終選別は偶然だったかもしれない。けど、できるだけ原作キャラと関わらずに静かに過ごしたいって思ってた私を動かしたのは紛れもない錆兎だ。義勇と一緒に、生きていて欲しかったから。
原作の中で、冒頭の少ししかない登場シーンの中で人気があるのは、錆兎のその優しくて真面目な人柄だから。
「錆兎が自分の力で切り開いた運命なんだよ。だから、そんなに自分のこと責めないで」
「………やっぱお前には敵わねぇわ」
ありがとな、とそう言った錆兎の横顔は少し晴れやかだった。そのタイミングで玄関の戸が開く音がした。義勇が帰ってきたのかな。
「おかえり!ぎゆ……う…ど、どうしたのそれ!?」
「熊に…」
「熊!!!?!」
ボロボロになって帰ってきた義勇。錆兎と慌てて駆け寄る。怪我は…してないみたいだな。よかった。
「お前…熊って…一体何したんだよ」
「走ってたら、落ちた。それで、熊が出てきて、追いかけられた」
泥だらけの義勇をお風呂へ追いやる。沸いててよかった。しっかし熊って…この時期冬眠してるだろうに、とりあえず怪我がなくてよかったわほんと。
その後、私、錆兎の順でお風呂に入り、夕飯。義勇が言ってた通り、錆兎の料理腕は確かなものだった。めちゃくちゃ美味しい。
げふ……食べすぎた…と横になっていると、一服したあと、竹刀を持って出ていく錆兎。え、食後にも鍛錬ですか………まじかよ。
そして使った食器等を炊事場へ持っていく義勇。なるほど、料理は錆兎で、洗い物は義勇。2人で分担してるのね。そして、お互いに時間を見つけてはひたすら鍛錬してると。うんやばいな。
よっこらせ…と重いお腹を何とか起こして私も炊事場へ向かう。何もしない訳にもいかんだろ。
「手伝うよ」錆兎と同じように声をかける。笑いはしなかったけど、あぁ。と返して手ぬぐいを渡された。皿を拭けってことかな。よし任せろ。
そして沈黙。カチャカチャと食器の音だけが響く。他人と2人きりの時の沈黙って、正直なにか喋らないととか、怒ってるのかなとか。割と苦手なことが多いんだけど義勇はなんか違うんだよな。この沈黙も心地いいというか。思ってるのは私だけかもだけど。
「これどこに仕舞えばいい?」
「これはここで……これはそっち」
「ふんふん」
これからしばらくお世話になるからね。食器の場所は覚えておきたい。
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鎖夏(プロフ) - 楽しく拝見させて頂いてます。私、錆兎が大大大好きなので、この作品まじ最高すぎます!!夢主ちゃんの性格もよき笑応援してます!! (2020年6月22日 18時) (レス) id: a8669a7d2d (このIDを非表示/違反報告)
花札 - そういえば、ひなたさんの推しは誰ですか?それと、有一朗君が死んでしまった所とっても泣きました。カナエさんはどうなるんでしょうかね。頑張ってください!! (2020年6月5日 15時) (レス) id: bb31b5d897 (このIDを非表示/違反報告)
いくら - ひなたさん» いえいえ!!こんな素敵な小説なら、いつまでも待てますよ!! (2020年5月19日 12時) (レス) id: 16c4d9d785 (このIDを非表示/違反報告)
花札 - こんにちは、とても面白かったです。(はやく続き読みたい・・・。)更新、頑張ってください!応援してます!! (2020年5月9日 21時) (レス) id: bb31b5d897 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - いくらさん» くそみたいに更新遅くて申し訳ないです…!頑張りますね!!!! (2020年5月9日 11時) (レス) id: 138242db57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひなた | 作成日時:2020年3月17日 12時