・ ページ22
Yoshinori side
怒ることはできひんかった。それは「ファンやから」とかももちろんあるけど、Aが気丈に振舞ったから。
その気遣いを、俺が怒ることで台無しにするわけにいかんかった。
でもたぶん俺、今めっちゃキレてる。
「大丈夫やから。ほら、帰ろ！」
正「…ほんまにごめん。俺が謝ってもしゃあないかもやけど、俺のファンやったし」
「ええてええて！正門くんが謝ることちゃうよ」
正「まだ近くにおったらアレやから、ちょっと遠回りして帰らん？」
「そうね、家バレちゃうもんね」
コンビニに寄ってあったかいコーヒーを買って、家から数分離れたくらいの公園に行くことにした。
その間も、俺はどこか落ち込んでいて。
Aを傷つけた。本人はそんな意識ないかもしれんけど、この子はそのへんちょっと麻痺してしもてるから。
正常な感覚に戻そうなんておこがましいことは思ってない。でも、少しでも気にしてほしかった。
無意識に溜まったものが、いつか爆発してしまいそうで。
ブランコに座って、コーヒーを飲んだり自分の口から出る白い息を眺めてみたりする。寒いけど、こんな穏やかな時間は久しぶりかもしれん。心の中は穏やかではないけど。
正「Aは優しいし、たぶんさっきのことも『そういうこともあるよな』とか『あの子の気持ちもわからなくないな』とかって考えると思うんやけど」
「え、うん。まさにそう思ってた」
正「そう思えるの、Aのかっこええとこやと思うねん。でも俺は、無意識に意地張るようになっちゃったんかなとも思ってるんよ」
そう伝えると、Aはブランコを揺らすように軽く脚を動かした。キイキイと、金具の音だけが公園に響く。
「…そうかもねえ。なんかネジ1個はずれてるかんじするもんなあ」
正「この仕事して行くうえでは、めっちゃ大事な感覚やと思うねん。いちいち傷ついてたら大変やから」
「うん、そうやね」
正「でも、その、俺の前ではそういうの、出してってくれたらええのになーとか」
そこまで言って気づく。
しもた。この子がついさっきラジオで言うてたことと、逆のことしてしもてる。
強引に連れ出して、笑かして。これはどう考えたって俺やない。小島や大晴ができることや。
俺にできることってやっぱり、こうして話を聞くことだけなん？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 988人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
^_^ - もう、夜中に読み漁って、、、もう、、話を読み進めるたびに、この人！？この人！？ってなって全員行け！って思うけどやっぱり推しと、、繋がってほしい、、です、、大好きなお話です！ありがとうございます！ (2022年6月28日 3時) (
レス) @page12 id: 32dc2075cf (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - かつみさん» わー、またコメントいただけてうれしいです！ありがとうございます。実は前にコメントいただいたとき、誠也くんをどうするかめちゃくちゃ悩んでいて…（笑）引き続きお楽しみいただけますと幸いです！ (2021年10月31日 13時) (レス) id: 17cd2db3b1 (このIDを非表示/違反報告)
かつみ(プロフ) - きゃー誠也さま、でてきましたね！うれしいです！ (2021年10月31日 13時) (レス) @page34 id: c63f8802c7 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 涼花さん» 涼花さん、コメントありがとうございます。ビバちぇとの関係性、すごくいいですよね…！お気遣いありがとうございます。今後もぜひご愛読いただけますと幸いです！ (2021年10月18日 9時) (レス) id: 17cd2db3b1 (このIDを非表示/違反報告)
涼花(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます、、！個人的にはびばちぇのどちらかと結ばれて欲しいと思っております笑。本当にこの作品大好きです！無理せず更新頑張ってください、！！ (2021年10月18日 3時) (レス) @page17 id: 2442b1f5fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リリー | 作成日時：2021年10月11日 21時
