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Ken side
指輪がほしい。
あの日、そう言ったA。こいつまじか？と思ったけど
どうやら、何日か前に小指につけてたお気に入りの指輪をなくしたらしい。それを聞いて、ちょっとホッとした。
“指輪”と聞いて薬指のんしか思い浮かばへんかった俺は、どうかしてるんかもしれん。
「おはようございます〜！」
あいつの誕生日の翌日。会議室に入ってきたAは、なんかいつもより余計に機嫌が良さそう。いつも飲んでる豆乳も、今日はいちご味や。
末「おはよ〜」
「誠也くんおはようございます〜」
末「あれ、A、その指輪かわいいやん」
「あっこれ！？ええでしょ〜」
リ「へー、こんなんあるんやなあ」
福「ネックレスとかはようあるけど、めずらしいな」
昔の結婚会見のお決まりのポーズを取りながら、みんなに指輪を見せびらかすA。
ああ、やめてくれ。あいつ絶対俺からもらったって言うもん。
ほかの5人がAに群がるなか、俺は1人で漫画を読んでるふりをした。時よ、過ぎ去れ。
ひと盛り上がりしたあと、みんな各々席についてミーティングの準備をしたりスマホをいじったりし始めたから、いつの間にかしっかり読んでいた漫画をカバンの中に入れようとしたらAが隣の席に座った。
「なあなあ小島くん」
小「ん？」
「6輪のバラの花言葉って知ってた？」
小「知らん。そういうの全然気にしてへんかったわ」
「ふーん。次に誰かに花あげるときは、気にしたほうがええで」
小「なんやねん、『不幸』とかやったん？」
白いバラをあげたのは、シンプルに俺が「ええな」って思ったからなんと、Aのペンライトの色やったから。ただそれだけやった。本数にまで花言葉があるなんて、知らへんし。
「教えませーん！」
アホみたいな顔してそう言ったAの左手の小指には、「A」のモチーフがついたシルバーのイニシャルリング。
まあ、それがあるかぎり、どんな花言葉でもおまえはハッピーや。
福「俺も同じの買おかな」
佐「いっそのこと7人でおそろいにします？」
小「…俺はつけへんぞ」
(花あげるのも指輪あげるのも、「幸せにしたい」と思うのもおまえだけ)
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作者名：リリー | 作成日時：2021年6月4日 19時
