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Taisei side
福「『好き』って言われただけなん？」
「おん。『気持ちだけ伝えとく』って」
なんなん。ちょっとええ男やんそいつ。
「ジャニーズやからとか抜きにして、全然そういうふうに見てへんかったし見られてへんと思ってたし…ちょっとびっくりしてもうてさ」
もし俺が、俺らが、気持ちを伝えたとしたら、Aはこんなふうになるんやろうか。
1000回くらい言わな信じてもらえへんような気がするなあ…。
福「俺なら、向こうがそう言ってくれてるなら甘えるかな」
「『これからも友達でいて』って言うってこと？」
福「んー…想像したら案外酷やったわ。でも悪いけど、それ以外浮かばんな」
俺らがそいつとちがうのは、“Aと同じメンバー”ってこと。
俺らとAは運命共同体というか、よっぽどのことがないかぎりあと何十年も一緒におらなあかん。
やから誰も気持ちを伝えられへん。しかも万が一ふられても、他の女性と一緒になることもしばらく叶わへん。
そいつはAと距離をとることも縮めることもできる。しかも、他の女性に逃げることもできる。
なんや、ちょっとだけそいつがうらやましくなってしまったな。
福「うれしかった？そいつにそう言われて」
「あ、うん！それはもちろんうれしかったで。中学から仲良い子やし」
福「最近もよく会ってたん？」
「会ってたなあ。たまに家にも来てたし」
福「え、前に言ってた、酔った勢いでちゅーしてきた人とはちごて？」
「あ、それはまた別の人」
モテるなあ、うちの紅一点は。まあでもどっちの気持ちもわかるから、なんとも言えん。
やばいなあ。こんな話聞かされて、負けず嫌いがあふれ出そうや。
福「Aがさ」
「ん？」
福「誰かを好きになることって、ないん？」
運転してるから、Aがどんな顔をしているかは全然わからへんけど。
たぶん、くちびるを噛みしめてる。
「…あるよ。誰かのことを好きになったことある」
でも、今はあんたらのこと以外考えられへんねんなあ。
「ちょっ、大晴くん泣いてんの！？」
福「ごめん、なんかちょっとジーンときた」
「あかんて！安全運転して！殺さんといて！」
本当は、苦しくって涙が出た。
福「なあ、もっかい『Into Your Eyes』歌ってや」
「おっ、ええよ！次は大晴くんハモリしてな！」
(このままよそ見せんとって。たとえこの関係がどうなっても)
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作者名：リリー | 作成日時：2021年6月4日 19時
