32話 緋色の月 ページ34
直様メイドを避け立ち上がると、目の前の光景に思わず息を呑んだ。
「ぅあああああああああああっ!」
鉄の匂いが鼻の奥を痺れさせ、部屋中に広がった真っ赤な血に何度も目を疑った。
零の目の前には、黒いフードを深くかぶった奴らが血塗れになって動かない両親を見つめていた。
叫んでしまった僕の前にそいつらが近づいてきた。が、失ってしまった「絶望」と「恐怖」に零の体はピクリとも動く事が出来ない。
「…ははっ、こいつはいい…小鳥遊家も消えたし、こいつさえ売り払っちまえば大金が手に入る」
そう言うと零を強く掴んだ。手には血の匂いが染み付いており、背筋がゾッと寒くなるのを感じた。
「…やだ…やめろ!」
バタバタとそいつの腕の中で暴れるが、ギリギリと強さを増していき離れられない。
「…ッ痛」
思わずそいつが掴んだ腕に噛みつき、力が緩んだ隙に離れると、震えた足を必死に動かし玄関へと向かった。
「…ッこの、クソガキが!」
ドンッドンッ、と銃声が後ろから響いたかと思うと、零の足に鉛玉が貫く。
「…ッ」
血が吹き出す足を引きずりながら、それでも足を止める事なく、屋敷の外へと飛び出した。
「…はぁ…はぁ…」
真っ白な雪にポタポタと血を垂らしながら、家の前の道を歩く。
空を見上げてみれば、緋色の月が不気味に零を見下ろしていた。
こんな時間に外に出るのが初めてで、どこに向かっていいかも分からない。
助けを求める人もいない。
早く、早く…遠くへ逃げなきゃ…。
そう涙を溜めて歩いていると、ふと父の言葉を思い出した。
『いいか、お前は絶対に夜の屋敷の外には出るんじゃないぞ!夜は…』
吸血鬼の活動時間だから。
思い出した時にはもう遅く、零は見知らぬ人に囲まれていた。それがすぐに人じゃない事ぐらい、吸血鬼を初めて見た僕でも分かった。
「…コイツ、チ、アマイカオリ…」
「…オイシソウダ」
次々に吸血鬼が集まってきて、零は逃げ場を失った。折角、屋敷から出れたのに…こんな事って。
もう、ダメだ。僕は此処で死ぬ。
そう確信して目を瞑った。が、中々吸血鬼が襲って来ず、不思議に思いゆっくりと目を開いた。
「…っえ」
其処には僕の後ろを見て、驚いたような表情をした吸血鬼達が固まっていた。
僕も思わず、吸血鬼達が向いている方を振り返ってみると、其処には目を真っ赤に光らせた黒い男が立っていた。
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夜蛍(プロフ) - 太陽さん» ありがとうございます!某執事好きなのでなんかそれらしくなっちゃいましたw (2015年7月1日 16時) (レス) id: 5105134f07 (このIDを非表示/違反報告)
太陽 - 何か黒〇事に似てるけど、とても面白いです! (2015年7月1日 16時) (レス) id: 6090b1bd34 (このIDを非表示/違反報告)
巴御前 - ありがとうございます(*⌒▽⌒*) (2015年6月28日 7時) (レス) id: c08cf44779 (このIDを非表示/違反報告)
夜蛍(プロフ) - 巴御前さん» 大丈夫です、テスト頑張ってください^ ^ (2015年6月27日 20時) (レス) id: 5105134f07 (このIDを非表示/違反報告)
巴御前 - 夜蛍さん» 返信遅くなってすみません 毎週買っているんですね!いいですね(*^-^*) ぜひ見てみてください(*^▽^*)すごく面白いですよ! 僕は今、月曜日にあるテストに追われてます( ノω-、) (2015年6月27日 20時) (レス) id: c08cf44779 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜蛍 x他1人 | 作成日時:2015年6月13日 18時