【黒子のバスケ】愛してる、なんて嘘。

Liar 01. ページ2

　ミーンミンミン…────
　
　
　
　
　ミンミンゼミの鳴き声が茹だるような暑さを象徴していて。
　
　
　顔から首に垂れる汗を腕で拭う。
　
　炎天下を避けるように屋上に出来た日陰に寝転がり、私の髪を飽きず弄っている彼に目を向けた。
　
　
　
　『 ねぇ。この状態だと昼食とれないんだけど』
　
　
　
　「あぁ、すまない。…懐かしくて」
　
　
　
　最後の方は少し悲しげに聞こえたけど聞こえないフリ。気付かないフリ。
　
　
　
　────彼は私の髪の毛が好きだ。
　
　元カノに長い髪がよく似てたとかなんとか。というか、私自体が元カノに似ているらしい。
　
その元カノとは言うと、亡くなってしまったらしくて。…病気、だったかな。私にそんなこと関係ないけど。


　
　だから彼は、私を次の彼女に選んだ。元カノに似てる。そんな理由から。
　
　
　
　私のことなんか見ていない、そんな彼が憎くて嫌いで────大好き。
　
　
　貴方の目は私を映してなんかいない。愛する人の虚像が見えてるだけ。
　
　
　貴方の愛している人はもうこの世にはいないんだよ。
　いない人を追いかけてどうするの。

　
　
　
　苦い気持ちを押し殺すようにパンに噛み付いた。
　
　
　
　
　
　
　彼は付き合った時から昔の彼女のことを口にしていた。今も変わらず、ずっとだけど。
　
　
　それが嫌で仕方ないけど、しょうがなく聞いて、しょうがなく相槌をうって、しょうがなく慰めた。
　
　
　そのせいか、私は感情を押し殺すようになった。
　
　だから、"なんであの子のことばっかりなの！？"なんて聞き分け悪く、怒鳴ったり、金切り声を上げることはしなかった。
　

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