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「……おや?」
ある日の昼下がり
見かけた人の輪の、そこにいるメンバーに思わず目を瞬かせた
マルコ兄にサッチ兄、ハルタ兄が中心にいて、イゾウ兄も輪の中にこそいないけど、近くの船縁に寄りかかって話に耳を傾けている
そして、その輪の中に混ざって楽しそうに話をしているのは__
「……リン、さん…」
ぽつり、と小さく声が漏れた
相変わらず私は皆と同じ時間を共有する事ができていないのに、何故彼女はあそこにいる事ができるんだろう
羨ましさと、少しだけ生まれたどす黒い感情
これ以上、あの光景を見ていたくなくて踵を返すと途端に誰かとぶつかった
反動で尻餅をつき、持っていた書類が散らばる
それにすら嫌悪感を感じていると上から降ってきた声に我に返った
「Aさん?大丈夫…?」
「あ…ツキナ、さん」
彼女は即座に屈み込むと散らばってしまった書類を集め始める
それに倣って慌てて同じように集め始めると、どこか窺うような声色で話しかけてきた
「あの、顔色が悪いみたいですけど…大丈夫ですか?」
「ッ、あの…!ちょっと体調イマイチなんで、この書類…マルコ兄にお願いしてもいいですか?」
「それは構わないですけど…お休みになられるなら一緒に部屋まで行きますよ?」
「いえ!根詰めちゃっただけなので大丈夫です。すみませんが…ソレ、お願いします」
拾い集めた書類を押し付けるようにツキナさんに手渡す
何か言いたげだったけれど、構わず踵を返しその場を後にした
急ぎ足で廊下を歩き、勢いよくドアを開けて壊れんばかりの力で閉める
ドアにゆっくりともたれかかると、そのままズルズルとへたり込んだ
「ヤバいな…ホント、どっちが情緒不安定なんだか」
誰の思惑か分からない、このすれ違い生活
本当に会いたければ、自分から動けばよかったのだ
心のどこかで“誰かが探してくれる”と思っていたんだ
そうやって、他人の力でどうにかしようとした結果がこれだ
__あの輪の中で、笑っていたのは自分だったのに
そう思えば思うほど自分が惨めになってくるし、それと同時にそんな嫉妬のような子供の我儘のような感情が湧き出てくる自分に苛立つ
じわり、と視界が揺れた瞬間に慌ててソレを拭い去った
ひとりでいればいるほど、この感情はおさまる事を知らないかのように溢れ出る
“ならば誰かに縋ればいいじゃないか”と自分の中で誰かが叫ぶが、足が動かないのは何故だろう
足が竦んで、その一歩が踏み出せない
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茉南(プロフ) - はるさん» 読んでいただきありがとうございます!更新を待っていただける事、とても嬉しいです(^^)のんびりし過ぎて忘れられないよう頑張っていきたいと思っています(笑)これからもよろしくお願いします! (2月15日 11時) (レス) @page49 id: 6c919d248d (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (2月15日 10時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - 雨衣さん» いつもありがとうございます(^^)そうなんですよー!原作はみんないなくなってて寂しくて(T-T)彼らを今後どうするか、ある程度考えているのですが…今が楽しくて悩み中です(笑)今後も楽しんでいただけたら嬉しいです! (12月28日 0時) (レス) id: 936b383323 (このIDを非表示/違反報告)
雨衣(プロフ) - 毎週本当楽しみにしてます!アニメではサッチもイゾウ達もらいなくなるので寂しいんですけど手のなる方へではみんないるから本当癒しになります!!今後の展開が楽しみです! (12月27日 21時) (レス) @page44 id: ab81a6b8c3 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - れなさん» 読んでいただきありがとうございます!文章を褒めていただき、昇天しそうです…。ちまちま書き進めていますので、のんびり待っていただけると嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします! (12月19日 23時) (レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉南 | 作成日時:2023年3月3日 11時