知らない人は怖い ページ7
医務室で朝食を食べてから暇を持て余していると、大先生が俺の元を訪ねてきた。
「大先生っ！！」
「えっ、あ、なに？」
大先生は困惑したまま、丸椅子に腰かけた。
へらりと笑って、首を傾げる。
その笑顔は、あの時、ホールへ戻っていったあの時の笑顔に、とてもよく似ていた。
「大先生……し、死んじゃうかと、思って…っ」
「！ あ、あぁ、もう大丈夫やで。心配かけてごめんな？」
「ほんとだよっ！！」
恨みを込めてじとっと目を細めると、大先生はまた、ごめんね、と謝る。
少し待っても、もうしない、とは言わなかった。
そのすぐ後、少し急いだ様子でシャオロンさんが医務室にやってきた。
「大先生、ーーーーー？」
「ーーーーーーー！Aくんに慣れてもらうために一緒に街行こ思て呼んでん」
大先生はシャオロンさんを手招きして、背を向けた状態でしゃがませる。
シャオロンさんは何か文句を言っている様子だが、大先生は気にする素振りもない。
「ま、街……？」
「そ。シャオちゃんにおんぶしてもらったら行けるやろ？」
そう言って俺の足を指して、シャオロンさんを指す。
確かに自分の足で歩くには不便だが、流石におんぶしてもらうなんて……。
「いや、俺歩けますし、」
「だーめ。ウチの軍医厳しいから怒られてまうもん」
「ほら、負ぶってもらうにはデカいし重いし……」
「シャオちゃんはグルちゃんおんぶして戦場から帰ってきたこともあるから平気やで？」
「ーー！ーーーーーーーーーーッ！」
延々と遠慮していると、シャオロンさんが弾かれたように叫んだ。
その様子にくすっと笑って、大先生が訳す。
「『傷つくからはよ乗って〜』って言うとるよ。……シャオちゃんのこと怖い？」
「いえ、全然……でも、その…」
シャオロンさんのことは怖くないのに、その先を続けられなくて歯切れが悪くなる。
大先生は面倒くさがる様子も、驚く様子もなく、優しく問いかけた。
「じゃあ、街は怖い？」
その質問の答えを「いいえ」とも「はい」ともしたくなくて、曖昧に返す。
「……まぁ、ちょっと…」
「そっか。でも、大丈夫やって！僕もシャオちゃんもついとるし、あれやったらシャオちゃんのこと絞めてええから」
ね？と大先生は明るく言った。
「そ…れは、良くないんじゃ……？」
頭に少し疑問符が残ったが、結局、俺はシャオロンさんの背に乗せてもらうことにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 511人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lento(プロフ) - 雑食さん» ありがとうございます！勇者の使命を最後まで見届けていただけると幸いです…。 (2021年4月7日 12時) (
レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
雑食 - すごい泣けてきた。。現実を突きつけてくるみたいで好きです。 (2021年4月7日 1時) (レス) id: 065cb097ab (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - お餅の中のお餅さん» ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年4月5日 9時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
お餅の中のお餅 - 楽しみだ、頑張ってください。 (2021年4月5日 6時) (レス) id: 9d76c4111a (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - うおさん» ありがとうございます！今更新止まってますが続きますので！もう暫くお待ちください！ (2021年3月2日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lento | 作成日時：2020年3月18日 19時
