勘違いしてしまう ページ27
その時、目の前を紅い花が通り過ぎる。
「…………え、」
ついさっきまで前を歩いていた彼女は、頭から血を流して、倒れて、……死ん、で。
〈Aくんっ！大丈夫！？怪我は！？すぐ迎えに行くから！！〉
「ひ、ひと、らんさ……っ、だ、大丈夫です…」
震える手でインカムを操作する。
戦慄く体は、意思に反してしゃがみ込んでしまった。
早まる呼吸が、揺れる視界が、下がる体温が、全てが恐怖を示していて。
「…へ、平和とか……ばか、じゃないの…？」
そうだ。
人は死ぬんだ。
いとも簡単に。
結んだ糸を解くように。
閉じた手を開くように。
瞬きのように、一瞬で。
ザクザクと地を踏む音がする。
「……Aくん、立てる？」
ひとらんさんの、優しい声が耳元で聞こえた。
それなのに、得られたのは安心というより、
「し、死なない、で……」
不安だった。
※ひとらんらんside
死なないで。そう言ったAくんの目の前には、鮮血を流す死体が転がっている。
「ひとらんさんは、死なない、よね……？」
その問いに答えるのは、とても難しかった。
だって、死なないわけないのだから。
人生の終幕を早めるような場所にいながら、無責任に死なないとは言えない。
でも、そう伝えられるほど、今の彼は強くないだろう。
「…………まだ、生きてたいかな」
だから、そう答えてしまう。
でも、彼の信じたいことを、信じてはいけないと教えなければならない。
勘違いしてはいけないと、言わなければならない。
そんな役目、いつもは御免なんだけど。
「でもね、“ここ”で生きるために、知っておいて欲しい」
僅かに、Aくんが顔を上げる。
その目にはまだ、愛らしい子供っぽさがあって。
「……絶対保証された命なんて、どこにもないんだよ」
それを壊してしまいそうで、言いたくなかったんだけど。
「…そ、うですね。……確かに、その通りです」
彼は案外、すんなりと受け入れた。
絶望ではなく、諦めが滲む目が。
僅かに浮かぶ笑みが。
これまで見えなかった、彼の過去を覗いているようで。
……人の死というものは、戦争なんかなくたって身近にあるらしい。
と、なんとなく感じた。
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Lento(プロフ) - 雑食さん» ありがとうございます！勇者の使命を最後まで見届けていただけると幸いです…。 (2021年4月7日 12時) (
レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
雑食 - すごい泣けてきた。。現実を突きつけてくるみたいで好きです。 (2021年4月7日 1時) (レス) id: 065cb097ab (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - お餅の中のお餅さん» ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年4月5日 9時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
お餅の中のお餅 - 楽しみだ、頑張ってください。 (2021年4月5日 6時) (レス) id: 9d76c4111a (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - うおさん» ありがとうございます！今更新止まってますが続きますので！もう暫くお待ちください！ (2021年3月2日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lento | 作成日時：2020年3月18日 19時
