ラッキー ページ25
「なるほど？書くんですね？何かを」
そう問うと、チーノさんはうんうんと頷く。
少し前、インカムでやり取りをしていたようだし、誰かが訳してくれているのだろうか。
それなら、俺にも我々語を訳してほしいものだ。
「で、紙に？……ぐるぐるー…うーんって…悩み？悩みを書くんですか？」
「ーーー！」
「あ、そうなの。あれ、違う？えっと、バツ？嫌なこと？」
「ーー！ーーーーー！」
「あ、合ってるっぽい？」
嫌なことか。不満を書けってことか？
チーノさんが頼んだ水とタオルが届いたところで、俺はペンを握る。
見えやすいように、インクは大先生の青色。
「まぁ、不満…はこれに尽きるよな……」
ペン先にインク先をつけて、なんとなく軽く落とす。
試しに弓と書いてみれば、案外ボールペンのようにすらすら走るものだった。
弓が引きたい。
たったそれだけ。
……きっと、欲を言えばもっと出てくるけど、俺が今一番望んでいることはこれに尽きる。
第一、戦争状態だとか信じられないくらい平和ではないか。
「もう何日弓に触ってないんだろ。ゴム弓も触ってないなんてなぁ……腕がなまる……」
ナイフばっかり慣れていくのに、弓はからきし引いてない。
「ーーー……ーーーーーーー〜？」
書いた紙をチーノさんに渡すと、やけに嬉しそうにして扉に手をかける。
……まぁ、開かないけど。
「ーーーー！？」
「コント？」
「大先生〜！ーーーーーー〜！」
インカムに向けて呼びかけたチーノさんが、暫く扉の前で待っていると、ギィッと扉は開かれる。
ちらりと見えたのは赤いマフラーで。
「すまんなAくん！チーノ貰ってくで！」
「トントン！？大先生ーーーーーー！？」
ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞなんて文字が見え隠れするトントンさんは、チーノさんを引っ張って行ってしまう。
どこか急いでいる様子で、チーノさんは大量のコピー用紙を置いて出ていってしまった。
「……はーい」
そんな返事をする頃には鍵がかけられているのだが、これは案外いいタイミングかもしれない。
だって目の前には、チーノさんが落として行った単語帳と紙があるのだから。
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Lento(プロフ) - 雑食さん» ありがとうございます！勇者の使命を最後まで見届けていただけると幸いです…。 (2021年4月7日 12時) (
レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
雑食 - すごい泣けてきた。。現実を突きつけてくるみたいで好きです。 (2021年4月7日 1時) (レス) id: 065cb097ab (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - お餅の中のお餅さん» ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年4月5日 9時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
お餅の中のお餅 - 楽しみだ、頑張ってください。 (2021年4月5日 6時) (レス) id: 9d76c4111a (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - うおさん» ありがとうございます！今更新止まってますが続きますので！もう暫くお待ちください！ (2021年3月2日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lento | 作成日時：2020年3月18日 19時
