【d!】一般兵が門扉の前にいるだけ (ページ3)

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Vol.2［褒章と同僚くん］ページ3

式典の日も、僕は必ず門扉の警備にあてられる。
相方の同僚くんがいつもその愚痴を言うので、また茶化してやろうと思ってたのに。

『まさか同僚くんが褒章をもらうなんて～！』
ぷんぷんと可愛らしく怒ってみようものなら、同僚くんに鬼の形相で睨まれるからやらないけど。

僕には少し威厳が足りないせいか、軽視されるきらいがある。
どうにも納得いかないのだが、同僚くんを見ていれば納得せざるを得ない。

確かに厳かな式典の雰囲気に似合わない自覚はあるけどさ。
こーんなに頑張ってるんだから、ひとつやふたつ貰えてもいいと思うんだよ！

未だゼロって！若手エースの片割れなのに！ゼロって！！
『かなしすぎるー…』
とほほ…と嘘泣きしていると、不意に人の気配がやってくる。

直ぐに仕事モードに切り替えて見てみると、そこにいたのは煙草休憩しに来た鬱先生だった。

(なーんだ。てことは、式典の方もそろそろ終わりかな？)

音漏れなんてあったもんじゃないので、どんな具合かは判断がつけられない。
外門の警備も大切だけど、インカムでお知らせしてくれればこっちも楽しいのにな。

「あれ、さっきの片割れくんやん。ご苦労さん。えと？シュトルツくんやったっけ、あかん忘れてもうたわ」
覚える気もないけど、と後に続きそうだが、その言葉は出てこなかった。

『僕はAですよー。それは同僚くんの名前です』
ついさっき聞いたので耳馴染みがあったのだろう。

同僚くんは案外多彩──主に器用貧乏だから、いろんな幹部さんに名前を知られてたりする。

同じエースでもこの扱いの差。
人徳ってやつかな？

『…どーせ僕はすちゃらか衛兵ですよー。…褒章にこだわることもないけど…やっぱ羨ましいなぁ…』

口を尖らせて、ブツブツとごねる。
しょーがないじゃん、欲しかったんだもん。

子供みたいに拗ねていると、聞き慣れた足音が聞こえてくる。
そのまま流れるように脳天へ鉄拳が落とされた。

『いだっ』
「ったく、来てみれば…。幹部様の前ではしたないだろ」
胸にきらきらした褒章をたくさんつけて、いつものように背筋をすっと伸ばしている同僚くん。

いつ見ても恥じる要素のないかっこよさ。
素早く姿勢を正すと、鬱先生に断りを入れて僕を引っ張っていく。

え、門番いなくなっちゃうけど。
もしかして鬱先生がやってくれるの？

「お前も貰えるらしいぞ、なんの褒章だかしらないが」
『えっ？ホント！？やったー！』

「大マジだから燥ぐな、落ち着け！」