1、出会い編 ページ1
____俺は耳がいい。
遠くからでも生き物の心音が聴こえるし、音で相手が嘘をついているか否かも分かるくらい耳がいい。
そして俺は根っからの臆病者。
そんな俺は鬼を倒す鬼殺隊をやっている。仕方なくやっている。
いやまぁ鬼殺隊は誇らしいよ??でもさ??俺めちゃくちゃ弱いんだぜ??死ぬよ??
じいちゃんに無理やり連れてこられて運良く鬼殺隊になった俺は、今日も今日とて街を見て回っていた。
そんな時……
善逸「(鬼の音だ……)」
え、まじ????
今度こそ俺しぬ?……なんて思いながら、辺りを見渡す。
ガクガクと震えながら腰を低くして、鬼に見つからないようにそっと歩き出す俺は、明らかに変なやつだと思われるだろう。
そんな俺の横を通り過ぎようとする2人の少女。
「その後にねー、歩美ったらまた転んでさぁ」
貴方「歩美は鈍臭いからね」
善逸「(_____お、鬼……だ)」
すぐに分かった。
明らかに鬼の音がする。
クスクスと女性らしい笑い方をする赤髪の少女からは、聞き慣れてしまった鬼の音がしていた。
だけど、それと同時に_____
善逸「あ、待って!!」
貴方「!!」
勝手に動いた自分の身体。
掴んでしまった、鬼であろう少女の手を。
その赤髪の少女の横では、"なにこの人"という目をして俺の事を睨む同い歳であろう少女。
善逸「(あ、おれ……今日命日だったんだ)」
そう思って、目を強く瞑ると……。
貴方「美紀、私この人に用事あるから、先に帰ってていいよ」
「……ほんとうなの?」
貴方「うん」
善逸「……え、」
その少女の言葉で、そそくさと帰ってしまったもう一人の少女。
鬼が、人間と友達になって、人間とともに暮らしている。
貴方「……鬼殺隊の人……だよね」
善逸「え゙!?う、うん……!」
貴方「ちょっと人気のない所に移動しようか」
少し微笑みながらそう言うと、少女は優しく手を握り返して、戸惑って動けない俺をゆっくりと引っ張っていった。
____手から伝わってくる暖かい体温。
月明かりに照らされてキラキラと輝く紅くて長い髪、その髪からは甘くて優しい香りがした。
……血の匂いも、嫌な音も、なかった。
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作者名:ユキ | 作成日時:2019年8月1日 23時