執行 ページ8
｢只今より、459番の死刑を執行する。｣
暴れる様子も無く、というより、暴れるすべが無いのだが、大人しく459番は首にロープをかけられる。
桐島は執行室の隣に設置されている死刑執行のボタンを押すためのボタン室でその声を聞いた。1つのボタンをゆっくり押した。
ガタンッ。
459番を支えていた床が抜けた。
｢…は、ぁ。｣
桐島は嫌に波打つ心臓を抑えて膝から崩れ落ちる。ボタンを押しただけで、息が切れた。
｢桐島看守。大丈夫ですか。｣
そう声をかけたのは、南波刑務所専属の教誨師の佐川杏だった。人の心を癒し、穏やかにさせる優しい雰囲気で、459番も心を許した女性だった。
｢さ、がわ、さん。｣
佐川と桐島は何度も顔を合わせた仲だ。
顔色の悪い桐島に佐川はハンカチを差し出した。
｢貴方は素敵な人です。この行動に慣れることがないのだから。大丈夫ですよ。貴方は人間として立派な人です。｣
｢佐川、さん。｣
ぽろぽろと零れ落ちる涙を佐川は静かに拭う。
大分落ち着いたのか、桐島は突然立ち上がり、立会室に向かった。立会室は執行室がガラス窓越しに見える。
｢…どうか、どうか…安らかに眠ってくれ。｣
動かない459番を前に静かに桐島は頭を深く下げた。
それは死を持って罪を償った459番への敬意だった。
桐島は立会室から出て、十三舎の廊下へ出る。
すると、その壁には双六が寄りかかっていた。
｢…双六主任。｣
｢流石に、お前の上司だったとしても、執行には立ち会えなかった。｣
｢どう、して。｣
桐島を見るわけでもなく、煙草を咥えて話し続ける。
｢昨日、話して分かった。今まですまなかった。｣
双六は桐島に向き直り、真っ直ぐ見据える。そして、綺麗に腰を90度に折って頭を下げた。
｢お前が抱えてるものは一人で抱えるべきじゃねぇって思った。だから、少しでも俺が一緒に抱えてやれるならと思ったんだがな。｣
バツの悪い顔をして桐島から視線を外す。
｢双六主任らしくないですね。｣
｢なっ、すまねぇなぁ俺らしくなく、て…。｣
途中まで声を荒らげていた双六は次第に声の怒気を鎮めていった。
桐島は安心しきったように頬を緩ませて大粒の涙を流していた。その涙は決壊したかのように留まることは知らない。
｢おい、A！｣
双六が名前を呼んだ時には桐島は安心しきって足に力が入らなくなってしまった。
｢すみ、ません。も、無理です。｣
｢わーってるよ。もう無理すんな。｣
双六は桐島を横抱きにして、看守帽を深く被らせた。
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よいよいの宵さん(プロフ) - 更新頑張って欲しいのですが最後のお話で終わりとあるんですがもう更新なさらないのですか？ (2023年1月24日 2時) (
レス) @page28 id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの旅人G - 物凄く好き、続き希望 (2022年5月5日 19時) (レス) @page28 id: f9e800024f (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - んーと、これってもう更新されないんでしょうか？ (2020年4月2日 18時) (レス) id: 4bf735c37e (このIDを非表示/違反報告)
コヤマドゥ。(プロフ) - みさきさん、零印さん、いつも応援して頂きありがとうございます！夏休みも後半に入りましたので、もっと更新は遅くなると思います。出来るだけ頑張ります。いつもありがとうございます！ (2019年8月12日 21時) (レス) id: fc2aad84a9 (このIDを非表示/違反報告)
みさき(プロフ) - 勉強合宿お疲れ様です！これからも楽しく読ませていただきます♪ (2019年8月12日 16時) (レス) id: 52964e3ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コヤマドゥ。 | 作成日時：2019年7月21日 18時
