いのちのうつわ 10 ページ27
「気に入らねぇ…」
虫さんとお母さんが帰ってからのことだ。
ベッドに身体を預ける私の傍に座っているてつやがムスっとした顔をしてそう言った。
「なによ、まだそんなこと言ってんの？ほんとしょうがないんだから…」
「そりゃそうだろ？俺はな、お前の出産に最初から立ち会う気満々だったんだぞ！それをだ、なぜ虫の野郎にその大事なお役目を横取りされなきゃなんねーんだよっ、普通に考えておかしいだろ？なぁ、絶対おかしいだろっ⁈」
「あーもう分かった分かった。残念だったね、てつやどんまい」
「ぜんっぜん分かってねーじゃねーか‼」
…あぁ、産後の疲れと痛みが全く回復してないっていうのに。
なぜ私はてつやの愚痴にまで付き合わなければいけないのだろうか。
息子が産まれた瞬間、泣きながらありがとうって頬ずりしてたさっきまでのてつやがかわいく感じるなぁ。
「あ、それより身体しっかり休めないとな！相当疲れてるだろ？」
「やっと気付いてくれた？良かった…もう本気でクタクタだよ」
「A」
「なに？」
名前を呼ばれててつやを見たら、そっと頭を撫でられた。
その表情はなんとも言えずとても幸せそうで優しい笑顔だったから、なんだか私まで嬉しくなってしまった。
「本当にありがとう、俺の子供産んでくれて。夢みたいだ。Aと俺の子がこの世に産まれてきたなんてさ、そう思うだけで嬉しくて嬉しくてしょうがない」
そんな風に言われたらなんだか泣けてきてしまう。
私はつい涙を零す、けれどそれをてつやがそっと親指で拭ってくれた。
「Aがお母さんになったんだな…なんか変な感じだな」
「なによ、変って。そういうてつやだってお父さんじゃん、それこそ変だよ。あのてつやが」
「なんだと⁉…って、なにやってんだ俺達。いちを人の親になったってのに」
「てつやが言い出したんじゃないよ」
「まぁ、急に親らしくはできねーよな」
「うん、まぁ…」
「これから少しずつ父親と母親になろう、一緒に」
「うん…」
てつやの言葉がとても頼もしく思えて、父親の貫禄？じゃないけれど。
なんかちゃんとお父さんになってるって、少しびっくりした。
「二人目の時は絶対タイミングはずさねーからな！」
「え、もう二人目の話ってどうなの？」
「うるさい、黙れ。この悔しさを俺は決して無駄にはしない。今度こそ俺が前面サポートするからいつでも二人目を…」
次回も虫さんに傍にいてほしいって思うのはいけないこと…だよね？
end.
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かえで(プロフ) - 七海さん» ありがとうございます。ついざわくん絡みの話を書きたくなってしまいますw更新頑張ります！ (2018年4月25日 15時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - ざわくんを想うヒロインの気持ちがいつも繊細でとても感情移入して読んでます。これからも更新楽しみにしてます。 (2018年4月24日 17時) (レス) id: ff325b6cef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年2月21日 12時
