いのちのうつわ 8 side MUSHIMEGANE ページ25
「そう言って頂けて有り難いんですけど…ほらあの子って意地っ張りというか、気が強いところがあるでしょ？女の子なのにねぇ、だから無駄に敵を作るところもあって親としてはずっと心配してて。てっちゃんも大変じゃないかしら、あの子お嫁さんにして」
「てつやはAちゃんじゃなきゃ絶対ダメですよ、他の人じゃあAちゃんの代わりはきかないくらい、きっとそれはAちゃんも同じで。そういう二人です」
「そうですか、良かった。少し安心しました、ありがとう、虫眼鏡さん」
「いえ…」
それから僕とお母さんは病室に場所を移し、そこでAちゃんの出産を待つことにした。
時間だけがただ過ぎていく…
今どんな状況なのかは分からないけれど、Aちゃんがこの世に命を産み出そうと懸命に戦っていることだけは確かだった。
それでも傍にはてつやがいる、きっとそれは絶対Aちゃんの力になっているはずだ。
頑張れ、頑張れAちゃん…
そしてその瞬間はやってきた。
部屋をノックする音がして、看護士さんが入ってきて笑顔を見せる。
「おめでとうございます、先ほど無事産まれました。元気な男の子ですよ」
待ちに待ったその言葉に、僕とお母さんは顔を見合わせて笑い合っていた。
その目には薄っすら涙が光っているように見える。
涙を拭うとお母さんは看護士さんに深々頭を下げた。
「ありがとうございました」
「良かったですね、お母さん。今産後の処置をしています。それが終わって少し休んでから病室に戻って来ますので、もう少し待っていて下さいね」
二人で分かりましたありがとうございますと頭を下げると、看護士さんは静かに部屋を後にした。
それからもう一度僕とお母さんは顔を見合わせる。
「おめでとうございます」
「ありがとう、本当に。虫眼鏡さんのおかげでもあるんだものね。本当にありがとう」
お母さんが僕に向かって頭を下げる、その姿に僕的にはただもう恐縮しかなかった。
「いえ、僕は本当に何もしていませんから！そんな頭上げて下さい」
「虫眼鏡さんはもう一人のお父さんね」
頭を上げたお母さんがにっこり笑って僕にそう言った。
もう一人のお父さん…
なんだか照れ臭いけど、悪い気はしなかった。
「頼りないですけど…なんて、調子に乗ったらてつやに怒られるな」
「あら、てっちゃんだって絶対感謝してるわよ！」
「いや…Aちゃんが絡むとあいつうるさいんで」
「まぁ、そうなの？ちょっと意外だわ」
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かえで(プロフ) - 七海さん» ありがとうございます。ついざわくん絡みの話を書きたくなってしまいますw更新頑張ります！ (2018年4月25日 15時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - ざわくんを想うヒロインの気持ちがいつも繊細でとても感情移入して読んでます。これからも更新楽しみにしてます。 (2018年4月24日 17時) (レス) id: ff325b6cef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年2月21日 12時
