いのちのうつわ 7 side MUSHIMEGANE ページ24
こんなに弱気なてつやを僕は見たことがない。
やっぱりてつやにとって、Aちゃんはそれだけ特別なんだとしみじみ思った。
「あ、旦那さんここにいらしたんですか？」
その声に顔を上げると先ほどの助産師さんがこちらへ歩いてきていた。
「「あ、はい」」
てつやと僕は同時に返事をしていて、それからお互い顔を見合わせる。
「なんで虫まで返事してんだよ」
「あ、いや、つい…」
「はぁ？ついってなんだ、ついって！」
僕達の小競り合いは無視で助産師さんは僕達に話をし始める。
「奥さん子宮口全開になりましたからこのまま分娩に入ります。立ち会いはされますか？」
「あ、はい！」
「あら、こちらがご主人なんじゃ…」
「いえ、僕ですっ‼」
あーぁ、そんなムキになって…
助産師さんちょっと引いちゃってるじゃん。
だけどそんなてつやにすぐ冷静な顔に戻ってる、さすがはプロだ。
「そうだったんですね、それで立ち会いは？」
「します！」
「分かりました、それではこちらへお願いします」
二人が去るのを見送って、僕はその場で安堵のため息をついた。
どうやらこれでお役御免のようだ。
ほっとしたような、少し寂しいような…
なんとも複雑な思いで暫く天上を仰ぎ見ていた時のこと。
「あら、もしかして…」
声がしたのでそちらへ顔を向けたら、そこにいたのはAちゃんのお母さんだった。
「ええと、虫眼鏡さんよね。ごめんなさいね、ずっとついててもらっちゃって。まさかこんなことになるなんて思ってなくて、さっきやっとてっちゃんからの連絡に気づいて…」
「いえ、大丈夫です。今分娩に入ったそうです、てつやも立ち会いに向かいました」
「あら、そうなのね。じゃあ気長に待ちましょうか」
「あの、僕も一緒に待っていてもいいですか？」
「え、でも朝からAに付き添っていてくれたから疲れてるんじゃない？」
「いえ、このまま最後までいたいんです。あ、逆に迷惑ですか？」
「ううん、そんなことないわ。寧ろ心強い」
「ありがとうございます」
そんな会話の後Aちゃんのお母さんは僕の隣にそっと腰を下ろして、横に持っていた荷物を置いた。
「あの子、いつもみなさんに迷惑掛けてないですか？って、もう虫眼鏡さんには今回かなりご迷惑お掛けしたみたいですけど」
「え、いえそんなことないですよ！…Aちゃんがいなかったら僕達は成り立たないくらいです。特にてつやは」
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かえで(プロフ) - 七海さん» ありがとうございます。ついざわくん絡みの話を書きたくなってしまいますw更新頑張ります！ (2018年4月25日 15時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
七海(プロフ) - ざわくんを想うヒロインの気持ちがいつも繊細でとても感情移入して読んでます。これからも更新楽しみにしてます。 (2018年4月24日 17時) (レス) id: ff325b6cef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かえで
| 作成日時：2018年2月21日 12時
