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記憶(side TSURIME) ページ41

目が覚めたAはほんの一部の記憶以外を失っていた。
記憶喪失というやつだ。
信じられなかった、そんなこと信じられるワケがない…
だけどAが俺に向ける表情はまるで他人を見ているようで、嫌でも現実だと感じさせられた。
その後の再検査でもなぜか異常は見つからず、医師の話ではもしかすると事故の際、頭部を打ったことによるものか、もしくは他にそれと同等のショックを感じたのではということだった。

「あの、いつか記憶は戻るんですか?」
「それは分かりません」

原因がどうであれ、俺が一番知りたいことを医師にぶつけてはみたけど、返ってきた答えは不安しか残らない言葉だけだった。
Aはこれからどうなるんだ、どうすればいいんだよ…
診察室を出たらそこにある廊下の長椅子にえいちゃんが一人座っていて、俺は肩を落としたままその隣に力なく腰を下ろした。

「A、異常は見つからないって。事故の時、頭打ってのことか他にショックがあったからか…どっちにしても記憶が戻るかどうかははっきり分からないって…」
「え、マジで?」

俺の説明にえいちゃんも絶句して、暫くの間二人に沈黙が続く。
頭も胸の中も、全身がぐちゃぐちゃに混乱していて気を緩めたら涙が出そうだった。
閉じた瞳の先に大好きだったAの笑顔が何度も浮かんでくるから余計に。
するとえいちゃんが先にぼそっと小さな声で口を開く。

「さっきは悪かったよ、言い過ぎた。ねぇみっくん、実際さ、ここに来る前なにかなかったの?」
「…例のAの友達がアパートに来た」
「それじゃね?」
「え?」
「それをAは見たんじゃないの?」

もしもそれが本当なら…血の気が引く思いだった。
俺にはやましいところがなかったとしても、事情を知らないAからすればきっとかなりショックだったに違いない。

「だけど今はそれをあいつから聞き出すのはできねーもんな」
「うん…」
「無責任なことは言えないけどさ、分からないってだけで記憶が戻らないって言われたワケじゃないんだろ?だったらまだ希望は残ってんじゃん。そんな落ち込むなよ、みっくん」
「うん、でもこれからAにどう接していったらいいか分からない」
「今まで通りでいいんじゃないの?きっと今一番不安なのはAだ。ちゃんと守ってあげなよ、誰でもない、みっくんが」

えいちゃんからのそんな言葉に背中を押されもう一度病室へ戻ると、ベッドで身体を起こしていたAが俺を不安気に見つめてきた。

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かえで(プロフ) - まりさん» 私には勿体ないくらいのお言葉を頂き本当に嬉しいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました。 (2019年6月5日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 好きです。この小説を読んでる時間とても充実してました!素敵な時間をありがとうございました! (2019年6月5日 17時) (レス) id: 367abc2ae5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - こーひーまめさん» いつも読んで頂きありがとうございます!最後まで頑張りますのでぜひお付き合いください。 (2019年6月3日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - えだまめさん» 有難いお言葉を本当にありがとうございます!あと少しで最終回を迎えます、最後まで頑張りますのでお付き合いください。 (2019年6月3日 17時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
こーひーまめ - いつも見てます!!続き楽しみに待ってます!更新頑張ってください!!!(o^^o) (2019年6月2日 23時) (レス) id: cfb9147a2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かえで | 作成日時:2019年4月9日 12時

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