80. 初めての夜 ページ30
答えなんてもう最初から決まってる。
その囁きに頷いたら私を軽々抱き抱えてベッドへと運ぶと、そこへそっと降ろしててつやが優しく頬を撫でてくる。
まだ乾ききっていない涙の後を指で拭うと頬にキスされた。
それだけじゃなくておでこや唇にも、たくさんキスが降ってくる。
てつやの手で、指先で、唇で…私の全てが塗り替えられていく。
堪らずに溢れる吐息を飲み込むみたいなキスに、頭の中が痺れたみたいになっていた。
「ん…はぁ…」
「Aって、こんな声で啼くんだな…」
「はぁ…やだ…」
「Aかわいい、もっと声出せ」
「やっ…」
心から愛した人と生まれたままの姿で肌を重ねることが、こんなに心地よくて幸せなのだということを私はこの時初めて知った。
これはきっと、てつやだから感じられた想い…
「Aもういいか?」
てつやが切なげな表情と声で囁く。
私は手を伸ばすとてつやの頬にそっと触れた。
「好き、てつや大好き」
思いを初めて口にしたら一緒に涙も溢れてくる。
そんな私の手を取ると指と指が絡まり合った。
それからてつやはもう一度私にキスをして。
「俺も…」
そう呟くと私達はこの時ひとつになった。
「大丈夫か、A」
「うん、平気…」
秘め事のあと、私の額に汗でついた前髪を直しながらてつやが心配そうに覗き込んでくる。
目と目が合ってなんとなく笑い合うと、てつやが唇に優しくキスしてくれた。
「あ、そうだ」
突然思い出したように枕元をごそごそ何か探し始めて、何やってるんだろうと私は不思議に思いながらそれを見つめる。
「あった」
てつやが手にしていたのは見覚えのある小さな箱。
それはいつか私に差し出してきた婚約指輪だった。
箱を開けて中から指輪を取り出すと、私の左手の薬指にはめる。
驚いたことに今度はサイズがぴったりだった。
「え、なんで…」
「ふっ、お前が寝てる時こっそり測ったのだ」
「…うわ、キモ」
「まてお前キモいってなんだ、キモいって!」
ムキになって怒るてつやを見て私は思わず吹き出す。
「うそ、ありがとう」
「A、結婚しようか」
「…うんそうだね、しようか」
「え、本当か⁉」
「うん」
てつやが心から嬉しそうな顔をして、私を強く抱きしめる。
私もそれに答えるようにてつやの背中に腕を回した。
「A、それじゃあ婚約祝いにもう一回やろう!」
「は?調子に乗るな」
私はそう言い捨て布団を被る。
また、あとでね…
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かえで(プロフ) - みことさん» 有難いお言葉を頂き本当に光栄です。今後の執筆にとてもやる気がでました!これからの作品もぜひぜひお付き合い下さい。 (2018年2月18日 10時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - こんにちは!完結おめでとうございます!てつやさんオチの作品の中で1番大好きな作品です!これからもかえでさんの作品、楽しみにしてます!(≧ω≦) (2018年2月17日 21時) (レス) id: e05cb40cc5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ゆうきさん» とても励みになるコメントをありがとうございます。2人の子供の話も書いてみようかなと意欲が出ましたw今後も続編考えていきたいと思います。またお付き合いくださいね! (2018年2月13日 18時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - こんにちは。コメント失礼致します。かえでさんの小説毎日の楽しみとして読んでいました!今回の番外編の更新もめちゃくちゃ嬉しかったです!!!子供生まれたあとのお話も読んでみたいです…(´;ω;`) (2018年2月13日 15時) (レス) id: bd844e0957 (このIDを非表示/違反報告)
zawa-mina(プロフ) - かえでさん» はい!もちろんです!頑張ってください! (2018年2月9日 19時) (レス) id: 2d47d3844b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2018年1月24日 11時