74. Naive ページ24
電気を消した部屋の中は、窓から差し込む僅かな月明かりだけで静寂に包まれていた。
隣にはてつやがいて、でもなんとなく恥ずかしくてそちらを見ることはできなかった。
「ねぇ、てつや寝た？」
「…寝てねーよ、つーかこの状況で寝れるワケねーだろ」
「え、ベッド狭いから？」
「違うわ！」
変なてつや。
また二人の間に会話がなくなって、それからしばらくしてそっと尋ねてみる。
「ねぇ、寝ちゃった？」
「だから寝てないっての、そんなすぐコロッと寝れるか！俺はの◯太じゃねーんだよっ」
私もなかなか寝付けない、だってこんな近くにてつやがいるんだもん…
自分で一緒に寝ようっていったくせにね。
少しまた静かな時間が過ぎて、突然てつやが話しかけてきた。
「なぁ、一つ聞いてもいいか」
「なに？」
「お前もう大丈夫なのか？その…トラウマの方は」
「…うん、大丈夫」
「本当か、無理してんじゃねーのか？」
「てつやとなら平気」
「マジ今そういうこと言うなよ、それ反則…」
そう言うとてつやの腕が私の方へ伸びてきてそのまま抱きしめられた。
腕枕されて、片腕で身体が包みこまれる。
私の顔はてつやの首元にきていた。
そこからはてつやの匂いがして、それはとても安心する匂い。
「もう一つ聞くけど、虫のことはいいのか？」
「…今でも好きだよ」
「え、はぁ？」
てつやが驚いたように私の顔を覗き込んできた。
私はそれを見てクスッと笑う。
「あくまでも仲間としてね」
「なんだよ、意味あり気な言い方しやがって」
「今はちゃんとてつやを見てるよ」
「え…」
「てつやのことしか考えてない」
てつやがさらに自分の方へと私を引き寄せて、その体温に心からほっとする。
目を閉じると心臓のトクトクって音が聞こえて、それがとても心地よかった。
そして、翌朝。
「おはよ、虫さん」
「おはよう、りょうくん」
「あれ、Aは？」
「まだ起きてないみたいだね」
「珍しいな、てつやはいつものことだけど」
「とりあえずてつやを先に起こすか」
虫さんはそう言っててつやの部屋へと向かう。
「ねぇ、てつやいないんだけど」
「いないってそんなことないでしょ。今日撮影するって自分で言ってたじゃん」
「朝帰りするつもりか…？」
「いや、虫さん。もしかすると…」
二人は恐る恐るそっと私の部屋のドアを少し開けて中を覗く。
「なるほど、そういうことね」
「これは由々しき問題だぞ」
二人の視線の先には身を寄せ合い眠る、てつやと私の姿があった。
75. 取調inリビング→←73. 眠り姫 side TETSUYA
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 417人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かえで(プロフ) - みことさん» 有難いお言葉を頂き本当に光栄です。今後の執筆にとてもやる気がでました！これからの作品もぜひぜひお付き合い下さい。 (2018年2月18日 10時) (
レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - こんにちは！完結おめでとうございます！てつやさんオチの作品の中で1番大好きな作品です！これからもかえでさんの作品、楽しみにしてます！(≧ω≦) (2018年2月17日 21時) (レス) id: e05cb40cc5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ゆうきさん» とても励みになるコメントをありがとうございます。2人の子供の話も書いてみようかなと意欲が出ましたw今後も続編考えていきたいと思います。またお付き合いくださいね！ (2018年2月13日 18時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - こんにちは。コメント失礼致します。かえでさんの小説毎日の楽しみとして読んでいました！今回の番外編の更新もめちゃくちゃ嬉しかったです！！！子供生まれたあとのお話も読んでみたいです…(´；ω；｀) (2018年2月13日 15時) (レス) id: bd844e0957 (このIDを非表示/違反報告)
zawa-mina(プロフ) - かえでさん» はい！もちろんです！頑張ってください！ (2018年2月9日 19時) (レス) id: 2d47d3844b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かえで
| 作成日時：2018年1月24日 11時
