検索窓
今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:329,610 hit

72. チャンス到来 ページ22

言ってしまった…
緊張と恥ずかしさから唇を噛みしめて、ただてつやを見つめていた。
そんな私をてつやは真顔のまま見つめてる。
そこから今何を考えているのかは全く読み取れなかった。
やっぱり変だと思われたかな…
静かに流れていく時間が私の緊張をさらに強めていく。
それに耐えきれず、思わず両手を握り閉めた時だった。

「ほら」

てつやは私をハグして背中を軽くぽんぽんって叩くとすぐに離れていった。

「てつや…?」
「編集の続きやってくる」
「え、待って!」

てつやがまた背中を向けて部屋を出て行こうとしたから、私はそれを慌てて引き止める。

「違うよ、そういう意味で言ったんじゃないよ、私が言いたかったのは…」
「…分かってるよ」
「…え」

こちらへ振り返って、てつやが真剣な眼差しで見つめながら私に言った。

「あのなぁ、さっき怪我したばかりの女をはいそうですかって抱けると思うか?」

その一言に私の顔が一気に熱くなるのを感じた。
そして同時になんてことを言ってしまったんだろうと後悔して、だから思わず顔を伏せてしまう。
そんな私をてつやがもう一度優しく抱きしめてくれた。

「ったくなんなんだよ、いきなり変なこと言い出しやがって」
「変なことって…」
「足捻ったショックで頭までイカれたか?」
「ちょっと、なにそれ!私が珍しく真面目に言ったのにどうしてそんな風に…」

顔を上げて言いかけた言葉は、てつやの唇で全て塞がれてしまった。
私は瞳を閉じるとそれを大人しく受け止める。

「ん…」

少しずつ深くなるキスに吐息が溢れ出た。


どれくらいの時をそうしていたんだろう。
てつやが顔を離して、私も瞼を開いて。
そうしたら目の前、近い距離にいたてつやがふと笑うともう一度軽く私にキスをした。

「てつや…あの…」
「続きは足治ったらな」
「…え」

私の頭を軽くぽんぽんって叩いてから、てつやはそのまま部屋を出て行こうとした。
ドアを閉めようとした時、こちらに背中を向けたまま私に言った。

「編集終わったら部屋片付けるわ、またお前すっ転んで怪我されても困るしな」
「てつや、あのね!」
「掃除終わったらまた来るから」
「え?」
「ここに、もう一度」

その言葉に私は笑いながらてつやの背中に答えた。

「うん、待ってる…」


それから静かに部屋の扉が閉まった。

73. 眠り姫 side TETSUYA→←71. そばにいたい



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (158 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
417人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かえで(プロフ) - みことさん» 有難いお言葉を頂き本当に光栄です。今後の執筆にとてもやる気がでました!これからの作品もぜひぜひお付き合い下さい。 (2018年2月18日 10時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
みこと(プロフ) - こんにちは!完結おめでとうございます!てつやさんオチの作品の中で1番大好きな作品です!これからもかえでさんの作品、楽しみにしてます!(≧ω≦) (2018年2月17日 21時) (レス) id: e05cb40cc5 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ゆうきさん» とても励みになるコメントをありがとうございます。2人の子供の話も書いてみようかなと意欲が出ましたw今後も続編考えていきたいと思います。またお付き合いくださいね! (2018年2月13日 18時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - こんにちは。コメント失礼致します。かえでさんの小説毎日の楽しみとして読んでいました!今回の番外編の更新もめちゃくちゃ嬉しかったです!!!子供生まれたあとのお話も読んでみたいです…(´;ω;`) (2018年2月13日 15時) (レス) id: bd844e0957 (このIDを非表示/違反報告)
zawa-mina(プロフ) - かえでさん» はい!もちろんです!頑張ってください! (2018年2月9日 19時) (レス) id: 2d47d3844b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かえで | 作成日時:2018年1月24日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。