自転車泥棒 4 ページ25
「あれ結局えいちゃん、りっくんのことぶっちぎりで引き離したんだよねぇ」
「当たり前だろ。俺がりっくんに負けるワケがない」
「えいちゃんの人生、負けたことないんじゃない？」
「そんなことねーよ」
「そうかなぁ…でも、ほんとすごいよね」
「なにがだよ」
「えーだってえいちゃんてさ、何やってもそつなくこなすでしょ。できないことなんてないじゃん」
「あのさ、お前俺のことなんだと思ってんだ？」
「スーパーマン、かな？」
「はぁ？んなワケあるか！だって俺は人間だもの」
「えじを…」
そうかなぁ、えいちゃんにできないことなんてあるかな？
「例えば？」
「なに？」
「えいちゃんにできないこと」
「子供産めない」
「はぁーなるほど…」
って納得してどうする！
「ちょっと！そういうことじゃなくてっ」
「まぁそれも含めて、俺にはお前が必要なんだよな」
「えっ、なにそれ。どういうこと？」
「そう言われて考えてみたけど、好きな女の前ではカッコよく見せたいじゃん？だから俺はAがいないとなーんにも出来なくなるってそういうこと」
最後、私を見下ろしながら軽く口角を上げて分かったかって言うえいちゃんに顔が一瞬で熱くなった。
ただでさえ暑いのに、更に体温が上昇する。
恥ずかしさから思わず俯いた瞬間、えいちゃんの大きな手が私の手を握りしめた。
繋がれた二人の手と手を見つめていたら、なぜえいちゃんがスーパーマンに見えていたか、その訳がなんとなくだけど分かったような気がした。
「ほら、さっさと買い物して帰るぞ。マジ暑さで干からびる」
「うん、そうしよう」
「なぁ、A」
「なに？」
「いつか俺の子、産んでくれる？」
「…えいちゃん、それってセクハラ？」
「なんでこれがセクハラになんだよっ」
とても暑過ぎた夏、色んなことを思い出しながら大切なことに気付かされた日。
end.
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作者名：かえで
| 作成日時：2019年2月27日 22時
