弐頁目【猗窩座さんとの出会い】 ページ2
「くそ、女か」
気配もせず、いつの間にか私の後ろにいたのは、男の人だった。
その人に、童磨さんと同じ気配を感じる。
『鬼、なのですね』
「…分かっていたのなら驚きだ。随分と変な奴だな」
『ふふ、前にも同じようなことを言われました』
思い出すのは、一昨日のこと。
あの日から私は両親から解放され、自由になった。
『貴方も、私を喰べないのですね』
「お前、前にも鬼に会ったのか?なら何故生きている」
そういう疑問を持つのは当然だろう。
鬼はヒトを喰うのだから。
しかし私はその鬼に会いながらも生きている。
彼はこちらを怪訝そうに見つめていた。
『変わった人だったんです。私を見逃してくださいました。貴方様、知っておりますか?《童磨さん》という方です』
途端、彼の顔が険しくなる。
『どうかなさいました?』
「…そいつは確かに《童磨》と言ったのか…?」
なんだかその雰囲気に気圧されて、言葉を発すことが出来なかった。
反射的にこくりと頷く。
そうすると、顔を歪めてため息を吐き出した。
『…お知り合い、でしたか?』
あまりな反応に、思わずそう問う。
彼はこちらを見ず、忌々しそうに月を見上げると「考えたくもないがな」と呟いた。
私は地雷を踏み抜いてしまったのだろうか。
罪悪感がのこる。
暫くの間が空いた後、彼は「帰る」と一言だけ言った。
その声は如何にも不機嫌そうで、益々罪悪感を感じる。
けれど。
『あっ、あの。最後にお名前を…』
「…猗窩座」
『…あ、あかざ、さん』
ぶっきらぼうだが、きちんと教えてくれたその声は微かに優しくて、口角が上がる。
笑っている私は、どんな感じなのだろうか。
ぼーっとしていると、また気配もなく移動していた猗窩座さんの手が、腰に回っていた。
あまりにも一瞬のことだったから理解が出来なかったが、抱きしめられているようだ。
『あ、猗窩座、さん?何の冗談でしょうか』
「癪だが、アイツがお前を喰べなかった理由は分かる」
耳元で話される声は少しくすぐったくて、身をよじる。
しかし、強く力が込められた腕は、それを許さなかった。
途端、ちくりという痛みが肩に走る。
何事かとそちらを見れば、赤い痕がついていた。
『っ、こ、これ!』
「せいぜいアイツにでも見せつけろ」
そう妖しく微笑むと猗窩座さんはいなくなった。
はたまた月が綺麗な、ある夜のことだった。
これが猗窩座さんとの出会い。
303人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鮭大根大好き - 更新頑張ってくださいーー!! (2020年11月12日 18時) (レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
かりん - 気になるぅぅ! (2020年9月12日 8時) (レス) id: c30d21e2cb (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - ギャアアアアアアアア!!!続き気になるぅぅぅ!!!!! (2020年3月10日 14時) (レス) id: 030d632589 (このIDを非表示/違反報告)
モブサイコ100(プロフ) - すみません。多分ですが3ページ目の最後の行のところなんですが自然ではなくて視線じゃないですか?私の思い違いかもしれませんが… これからもがんばってください! (2019年7月27日 14時) (レス) id: 6acf3cee05 (このIDを非表示/違反報告)
窩座女_参(プロフ) - 猗窩座の小説がなかなか少ないのでめっちゃ嬉しいです!!←。神ですか作者様は!!更新楽しみにしてます! (2019年7月27日 4時) (レス) id: e12b8d56e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かうんとだうん | 作成日時:2019年7月26日 20時