壱頁目【童磨さんとの出会い】 ページ1
『貴方は、誰でしょうか』
酷く恐ろしい筈の光景も、私は何故か冷静に、無機質に眺めていた。
生臭いヒトの血の匂いが漂っている。
それでいて、肉親の血を浴びているのだ。
普通の子ならば泣き叫んでいるのだろうか。
しかし、私をいいように利用し、あまつさえ売り飛ばそうとしたこの両親にはなんの愛も無かった。
『貴方は、誰でしょうか』
震える声でもう一度問う。
そうすると、目の前の長身の男はにこりと愛嬌のある笑みを浮かべた。
「初めまして、だね！俺は童磨っていうんだ。君を喰べる鬼さ」
鬼。
昔に聞いたことがあったな。
今は亡きお婆さまに。
そうか、私はしぬのか。
そのことには、なんの恐怖心も湧かなかった。
私は自ら腕を開くと、今まで殆ど言葉を発さなかった口を開いた。
『どうぞ、お喰べになってくださいな』
「わあ、変わった子だねえ。恐くないの？」
『ええ。お生憎様』
童磨さんという鬼は物珍しそうに、それでいて、楽しそうに私を見つめた。
そして、ふっと怪しい笑みをうかべる。
「うん、やめた」
『……？』
「君を喰べるのは、遠慮しておくよ」
突拍子もないことを言いはじめた。
どうしてだ。
もしかして、不味そうなのだろうか。
確かに私は顔色が悪いけれど……。
ちら、と童磨さんを盗み見る。
「どうしたの？」
『…いえ、その…私、美味しくなさそうですか？急に喰べるのを止めると言われたものですから…』
瞬間、笑い声がこの部屋に響いた。
『な！どうして笑うんですか！』
思わず大きな声を出してしまった自分に驚きつつも、童磨さんを軽く睨みつける。
そうすると、目を細めてこちらを見た。
その顔は笑いに染まっている、
「いやあ、君みたいな子は初めてだよ。普通なら泣き叫んで、顔が醜く歪むのに。っふ、くく…。食事自体が《美味しいか？》って」
あはは！と一際大きい声で笑うその姿に何故か鼓動が早まる。
体も熱くなってきた。
私にとって初めての感情だ。
《羞恥》など。
「ああ、やっぱり君は面白い。…また、会いによう」
『また、ですか？』
「イヤかい？」
『いえ、滅相もありません』
《また》。
その言葉がとてつもなく愛おしく感じる。
いつのまにか童磨さんは消えていて、部屋には亡骸ばかりが残っていた。
ただ月だけが、私の心を見透かしているかのように、美しく輝いている。
これが、童磨さんとの出会い。
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鮭大根大好き - 更新頑張ってくださいーー！！ (2020年11月12日 18時) (
レス) id: 206c89cdd5 (このIDを非表示/違反報告)
かりん - 気になるぅぅ！ (2020年9月12日 8時) (レス) id: c30d21e2cb (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - ギャアアアアアアアア！！！続き気になるぅぅぅ！！！！！ (2020年3月10日 14時) (レス) id: 030d632589 (このIDを非表示/違反報告)
モブサイコ１００(プロフ) - すみません。多分ですが３ページ目の最後の行のところなんですが自然ではなくて視線じゃないですか?私の思い違いかもしれませんが… これからもがんばってください！ (2019年7月27日 14時) (レス) id: 6acf3cee05 (このIDを非表示/違反報告)
窩座女_参(プロフ) - 猗窩座の小説がなかなか少ないのでめっちゃ嬉しいです!!←。神ですか作者様は！！更新楽しみにしてます！ (2019年7月27日 4時) (レス) id: e12b8d56e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かうんとだうん | 作成日時：2019年7月26日 20時
