5 ページ6
.
突然現れたのは紛れもない我がD国のリーダーであるグルッペン・フューラーだった。何だってこんな場末の兵士食堂なんかに、と口をついて出そうになるのを何とか抑え、すぐに立ち上がる。
『は、こちらに。』
背中に部下達の視線を痛い程感じる、何か粗相をしたのではないか…？みたいな雰囲気は切実にやめて欲しい。私は絶対に問題を起こさない。恐らく今呼ばれたのも何かの頼み事なのだ、幹部側の料理の手が足りないから人員整理をしろとか。
相当が中々話し出さないため切れ長の蒼眼と何故か暫く睨めっこすることになる。頭脳も切れ容姿にも恵まれ産まれも高貴でカリスマ性に溢れている、神が依怙贔屓して100物くらい掴み取りで与えたのが彼だと思う。私は他所の国出身ということもあってか忠誠心が薄い方なので、全く羨ましいこと、と内心悪態をつく。
彼は暫く私や私の部下たちを見ると徐に｢A・ゾロアスターに頼みがある。｣と口を開いた。そうでしょうそうでしょう、頼みでも無ければこんな小汚い家畜部屋に総統様は来ないでしょう。
心情を悟られないよう『は』と返事をすれば、彼は品のある動作で顎に手を当て何かを熟考し始めた。何をしても背景に大輪の薔薇が咲くのはそういう仕様か、はたまた私の僻みから来る錯覚か。どちらにせよ華美で適わない。
そして彼はもう一度口を開くと、爆弾を落とした。
.
｢俺もここに食べに来ても？｣
『は？』
思わず言葉が乱れたが、これに関しては正しくは？である。一国の指導者様が？名前も覚えきれていない部下達と共に？元兵士の飯を食らう？普通に考えてヤバいし普通に考えなくてもヤバい、何を言ってるんだこの総統閣下は。
彼は私の顔を見ると｢お、そっちが本性か｣と嬉しそうに笑った。ワロてる場合ちゃいますねん、あんたの爆弾発言で部下が多分3人くらいフォーク落としてるんですよ。カランカラン聞こえてるんですよ。
『お言葉ですが総統様、あの……すみません、学が無いので敬語に明るくなくて……何と言えば良いか……。』
｢そうだな、"イカれてるぞお前"って所か？｣
『そんな滅相もない』
｢ククク、頷きながら言われても説得力に欠けるゾ｣
総統は私との対話で満足したのかその場で手を挙げた。すると背後から金髪の、恐らく幹部であろう美青年が｢もうええんか？｣とグルッペンの後ろから出てきた。
｢ではまた。因みに俺は甘味が好きだ。｣
彼はそう言い残すとカツカツ軍靴を響かせ帰って行った。
当然、取り残された私たちは暫く声が出なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 594人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひより(プロフ) - 天才の小説を見つけてしまいました……(涙)キャラ作りとか、地の文の書き方がめっちゃタイプ…大好きです！！作者様のリアルを優先して欲しいのは勿論なのですが、もし戻ってこられることがありましたら是非続きが読みたいです…待っています……！ (11月8日 6時) (
レス) @page31 id: 2340b31398 (このIDを非表示/違反報告)
yまだ(プロフ) - 更新再開ありがとうございます！待ってました！！syp大好きなのでたくさん絡んでくれて嬉しいです！！（ ｉ _ ｉ ） (2023年1月9日 2時) (レス) id: a023009b5b (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 俺はマスターボールだ！！！！ (2022年12月2日 22時) (レス) @page20 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
みずき - ポケモンゲットだぜ☆((あ、面白かったです〜更新頑張ってください〜 (2022年9月22日 23時) (レス) @page20 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
虹色のしっぽが付いた雪だるまのジャス民は我々だ！(プロフ) - 思わずモンスターボール構えた読者です笑 (2022年9月20日 17時) (レス) @page20 id: 779b4574fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暴 | 作成日時：2022年5月26日 2時
