朱龍の血を引く少女は「高華の獅子」

43話 火の部族 ページ45

結局、オッさんの会議の都合上帰れなかった



今日の五部族会議は秒で抜け出したし暇だ



荷を解いて自慢の袋槍を取り出し、振る




” 女の力で負けるなら技術が身体に染み込むまで槍を振れ ”



ムンドク師匠の教えの通りに槍を振り、踏み込む



いつか絶対ハクに勝つんだ



王様の犬になる前に、絶対




槍稽古を続けていると、後ろの廊下を通る役人たちの会話が耳に入った



「部族会議での陛下のご様子はどうだ？」



「ああ、また部族長達のいいなりになっているらしい」



「火の部族は隣国から武器を買い占めているらしいぞ。王の許可もなく」



「このままでは部族達の力が増し、国王の力が衰える一方だ」



「あのような臆病な王にこの国を任せて良いのか？」




言われてる言われてる。無理もないか、あのポヨンじゃな……




威厳はないし、ポヨポヨしてるし




あんなのの犬なんてまっぴらごめんだ




ふと王様の言葉が頭を過ぎった




《ヨナの護衛として、ずっと城にいてくれないかい？》




『…嫌ですよ王様。私は』




ヨ「嫌です!」





姫様





声の聞こえた方へ視線を向けるとそこにはカン・テジュンと向き合っている姫様の姿があった。





隣のルシアを見つけ思わず草陰に身を隠す





ヨ「私は貴方と離宮には行きません！」





(あーあ、またカン・テジュンに言い寄られてやんの)




殺すぞテジュンのクソ野郎と思っていると、テジュンが笑みを浮かべながら口を開いた




カ「つれない事おっしゃらずに。離宮には素晴らしい花の庭園があるとか。案内してくださらぬか？」




ぐいっと強引に姫様の手首を引っ張る。




ヨ「放……っしてっ！」




(クソ野郎！嫌がってんだろ！)




飛び出そう考えてから首を横に振った




いや、まずい。後々面倒な事になる




今反抗すれば尾びれ背びれのついた偽りの被害をカン・テジュンが火の部族で流すだろう




それが火種となって地の部族と戦にでもなったら民に被害が出る




「おい……姫様、嫌がってないか？」




「誰かお止めしろ」




「しかし、カン将軍のご子息だぞ。下手なことして将軍に睨まれたら」




「では陛下をお呼びしろ」





……ダメだ、もうほっとけない




『…姫様？陛下がお呼びです。大至急との事でして』




ヨ「え、ええ！すぐ行くわ！！」





草陰から身を起こし、姫様の隣に立つ




クルリと身を翻して、私の衣を掴む姫様の背を押して王宮へ向かった




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