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己の立場 ページ4

「ここ、でいいんだよね…?」


国木田に示され付いた場所はアパートだった。
それも今にも幽霊等の類の出てきそうな。Aは内心ビクビクしながら中に入る。国木田の文面では一階の田山家に来るように、との事のだった。
廊下を歩く度、ベニヤ板の床がギィギィと音を立てる。穴でも空いてしまうのではないかと、ドギマギしながらAは歩く。あばら家に吹き込む風が冷たく、Aの恐怖を煽るように首筋を優しく撫でる。首を竦めて目をキュッと閉じた。そして暫く恐怖に耐えたのち、Aは田山花袋の家を探す。
田山…田山…と探しているとすぐに見つけることが出来た。心做しか中から大きな嗚咽混じりの泣き声が聞こえる。先程の恐怖も大きな泣き声にかき消され、何処へやら。若干面くらい乍らもここが国木田のいるところで間違いないのだと、踏ん切りをつけた。
そして少し躊躇いながらもチャイムを押すとバタバタと足音が聞こえ、すぐに扉が空いた。そこには敦が目を丸くして立っていた。


「あ!国木田さん!Aさん来ましたよ!」


敦は中に向けて声を掛ける。扉が空いたと同時に泣き声が大きくなる。男の泣き声だろうか。
Aは戸惑い乍らも鞄を漁りファイルを取り出す。


「敦くん。国木田さんから頼まれてたファイル、持ってきましたよ。」

「ありがとうございます!とりあえず入ってください!僕の家じゃないけど。」


敦に招き入れられ、控えめに「お邪魔します。」と声をかける。靴を揃えてのろのろとゆっくりとした動きで敦の背中を追う。そのまま居間へ通されると所狭しと置かれた電子機器に国木田、と、泣く布団が視界に入った。


「こ、これは一体…。」

「A、すまなかったな。」


Aの声に国木田は振り返ると困ったような表情を浮かべていて、小さく謝る。と思ったら国木田はサッと振り返り、泣く布団(にくるまった男)に「何時まで泣いている花袋!! Aが来たんだ!いい加減にしろ!」と罵声を飛ばした。
相変わらず厳しいなと思っていると布団から「A…?」と声が聞こえる。Aは背筋を伸ばしてその場に正座し、姿勢を正す。


「はじめまして。武装探偵社で調査員として働いています、最果Aと申します。」


凛とした声で一息で言い切る。妙な空気に緊張していたが吹っ切れたように胸を張った。
そしてその声に呼ばれるように田山花袋が布団から顔を覗かせる。

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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます!本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです! (2019年1月24日 9時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです!更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります! (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね!楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m  (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海姫 | 作成日時:2018年12月23日 21時

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