【文スト】空から落ちた薄倖美人３

暴かれた真相 ページ33

「平行世界の弱者救済だろう。」


突然聞こえた第三者の声に一斉に皆そちらを見る。そこには渋い顔をした国木田や谷崎達がいた。
平行世界の弱者救済、Aの頭で木霊する。そして震える声で「それは一体。」と呟く。
国木田はより顔を顰める。


「皆逃げないンです。」

「は？」


国木田の代わりに紡いだ谷崎の言葉に中也が心底訳の分からなそうに声を漏らした。国木田がため息をついて谷川を見つめる。そこには先程まで浮かんでいた薄ら笑いは無く、真剣な表情を浮かべていた。否、そこには少しだけ諦めのような、達成感のようなものがあったのかもしれない。


「谷川の異能は平行世界に干渉することだ。そして簡単な物は引き寄せることが可能だ。だが人間の場合発動する条件があるらしい。
心の底から救済を求めた人間、ということだ。そして救済、つまりこの世界に谷川の異能で呼ばれた人間は谷川に従うということを条件にこの世界で生きられる。そして、オークションに並ぶ人はそれを了承して自ら商品として望んでいるんだ。」

「そんな…。
でもそれってあんまりじゃ！」

敦の高ぶった言葉に太宰が「なるほど。そういうわけか。」と呟く。


「客らが顔を隠しているのは企業で成功した勝者達だ。谷川の通信室に客の顧客本と連絡先が並んでいた。
恐らく谷川達によって選律された人間で売られた人間は定期的に連絡を取り合い、互いの状況を定期的に報告しあってるんだろう。それに似た情報が暗号化されれ谷川の書庫から見つけたよ。」


太宰はこの作戦の前に通信室と谷川の書斎に忍び込んでいたのだ。そこで見つけた証拠等に何が隠していると踏んでいたらしい。それが国木田と谷崎の言葉で解決したらしい。
暴かれた真相にAは「どういうことですか、」と言葉を漏らした。そして手に持った銃を落とす。
その様子に谷川自体も戦意を喪失したらしく、爬虫類のような鱗が剥がれ落ち、人の姿に戻る。


「谷川さんの考えてることが分かりません。いい加減答えて下さい。
それなら、オークションに出す予定のない私を一体どうしたいんですか！？ 」


さんざめくようなAの言葉に谷川はため息をついて頭を掻いた。

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