#36 ページ6
空振りは続いて、もうこっちに来て四日目。
焦る気持ちばっかりが募る。
なんとか落ち着こうと寮を出た。
頬を撫でる風は微かに夜の匂いがする。
コンビニでも行って、何か買おうかな。
「ここを、左折っと」
慣れない土地はコンビニに行くにも一苦労。
地図アプリと睨めっこをしながら歩みを進めて、大通りに出たところで顔を上げる。
至る所に煌々と明かりが灯っていて繁華街然とした街並み。
すげぇな、と何度目かの感嘆の声をあげる。
「……え、」
それでも昼に比べると人通りはぐっと減って。
まばらな歩行者の中に、ともの面影を見た。
「とも…」
違うかもしれない、十年も会ってないんやから。
でも人違いなら人違いで、いい。
なんやこいつって目で見られても、俺全然傷つかない。
「、待って…！」
黒いパーカーに包まれた肩を叩く。
イヤフォンをしていたらしいその人は、耳の辺りをもぞもぞとしながら振り返った。
「……だい、ちゃん…」
はく、と情けない息が漏れる。
何を言えばいいかわからなくて、とも、とも、と何度も確かめるように呼ぶ。
「とも…元気そうで良かった。ずっと連絡取られへんかったから…」
ともは俯き気味に頷く。
ようやっと興奮状態が落ち着いてきて、感動的な再会にしては彼の表情が晴れないことに気づく。
「とも…？」
「もう俺行かなきゃ。おやすみなさい」
「え、ちょっ…」
そのまま進んでいこうとするから慌てて手首を掴んで引き止める。
「なに？」
「っ、おかん…おかん、死んだで」
「そう」
「そう、って」
「それ伝えるために呼び止めたの？」
すぅ、とともが目を細める。
流れるような標準語、俺の知らない表情の作り方。
力が抜けたタイミングで、振り解くようにともは俺の手から逃れていく。
「もうあの家に戻る気はないから」
「、せめて墓参りだけでも…もう葬儀とか諸々終わってんねん。おかんの遺書も家にある。怖くて開けれてないけど、ともにも家帰って見てほしい」
「仕事、忙しいの。そっちに行く時間なんてない」
「…！なんでそないなこと言うねん！」
思わず声を荒げると、ともは怯えたような目をした。
怖がらせてもうた。慌てて口を開くけど、言葉を紡ぐことは叶わない。
「もう来ないで」
はっきりとした拒絶の言葉。
内臓をぎゅっと握りつぶされたように苦しかった。
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ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん！コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (
レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナセ
| 作成日時：2023年1月6日 16時
