検索窓
今日:3 hit、昨日:16 hit、合計:28,329 hit

#32 ページ2

もういい大人とは言え、親を亡くすにしては人より早い。
あきこさんは何かあったら頼ってと言ってくれた。

「とも、どこにおるん…」

話さなきゃいけないこと、たくさんあるんやで。
ともには散々ひどい態度とったかもしれないけど、オカンの墓参りやって一緒に行きたい。

そんなこと何も知らないともの筆跡はどこまでも穏やかで、このまま知らない方が幸せなんやないかとすら思ってしまう。
ずっとずっと遠くへ行ってしまったとも、もう気持ちもわからないよ。

悲しいことを考える。
辛そうにしていた晩年のオカンの姿。
もう二度とオカンと会話ができないこと。
オカンの死を悲しんでいた親戚の背中。

そうしないと、もう一つの感情が溢れて体が真っ二つになってしまいそうだった。

悲しみと、喜び。
ともと一点の曇りもないしあわせを得られてしまうんじゃないかって期待。
もう何年も会えてないのに、おかしいよな。
昔のともならきっと受け入れてくれただろうけど、今はどうなんやろ。
わからないのに。

ともに会いたくて仕方なかった。





大ちゃん。

声がする方に振り向くと、ともが微笑んでいた。
金髪と、幼さを残した丸みのある頬。
高校の制服に袖を通した彼は、何度も何度も思い返したともの姿。

とも、

声をかけようとしても、喉の奥がぎゅっと詰まって言葉が出ない。

とも、

大ちゃん、俺、もう一人で生きていくって決めたから。
大ちゃんは大ちゃんで、自分の人生歩んでって言うたよね?

そうやけど、なぁ、とも、





電話の着信音で意識が戻る。
いつのまにかソファで寝落ちていたらしい。
夢の中のともの、責めるような視線を思い出しながらスマホをタップする。

「もしもし」

電話の主は興信所の人だった。

『すみません。弟さんの居場所ですが、特定には至らず…。ただ東京駅近辺で、似た人間を見かけたという人がいます。正直、ここまで出ないとなると名前を変えていたり、日頃から顔を隠すような振る舞いをしているのではないかと』

東京駅、とメモをする。
正直東京に土地勘がないから、近辺と言われてもどれくらいの幅を持てば良いのかわからないけど。

一つだけ見つけたともの手がかり。
チラシの裏紙をお守りと一緒に財布に突っ込んだ。

#33→←#31



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (169 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
465人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ナナセ(プロフ) - にんさん» にんさーん!コメントありがとうございます😭 なんとか完結まで漕ぎ着けました…(電車なのに) 最後まで読んでくださってありがとうございます♡ (2023年2月14日 11時) (レス) id: 775b763c2b (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - 愛しのナナセ様🌍完結おめでとうございます✨大好きなナナセさんの世界で、こちらのお話は格別でした。線路の延伸が見える終わり、胸を撫で下ろしています。よかった✨二人とも幸せになるんだよ🎊 (2023年2月14日 0時) (レス) @page22 id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナナセ | 作成日時:2023年1月6日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。